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絵本「おばけリンゴ」のあらすじや随想

 この絵本について―読み聞かせの後、子どもたちの
          感想が盛り上がった!
                                                                 

さく:ヤーノシュ

やく:やがわ・すみこ

出版社:福音館書店
    
出版年月日:1969年3月31日

出版社による対象年齢:読んであげるなら 4才から
           自分で読むなら  小学中学年から

定価:1320円(本体1200円)

                         
 はじめに


    ポーランド生まれの作家ヤーノシュの作品です。

   多くの国で翻訳され読者を楽しませてきました。楽しむだけでなく、作品に込められた

   主人公の悲喜こもごもの感情が年齢を問わず読者の心を深く揺さぶってきたことで

   しょう。

   この絵本は、人間の不安や欲望や葛藤を物語世界で描ききるみごとさ、それがシンプ

   ルでユーモラスな絵からも読みとれる面白さにあふれています。

   矢川澄子さんの名訳が読者を物語にグングン引き込むでしょう。

   
 あらすじと随想


   昔ワルターという貧しい暮らしの男の人がいました。

   彼はリンゴの木をたった一本だけ持っているのですが、その木には花も咲かず実もな

   りませんでした。ワルターはたくさん実のなったよその木を見ては悲しくなり、夜に

   なると「たったひとつでいいからリンゴがなりますように」と心を込めて祈ったので
   
   す。
   
   すると次の春、ひとつだけ花が咲きました。夏に小さな実がなった時にはもう天にも登
     
   る気持ち。
   
   ところが秋にリンゴの実が大きくなると、収穫が惜しくて一日伸ばしにし、かといっ
   
   て誰かに盗られるのではないかと心配でずっと見張っていたのです。

   するとリンゴはおばけのようにどんどん大きくなってしまいました。
                       
   もうこうなったら、市場で売るしかありません。でも大きすぎて輸送列車の入り口か

   ら中へ入れることさえ無理。しかたなくワルターは押しつぶされそうになりながら、

   おばけリンゴを背負って市場へ運びました。どんなに高く売れるかということだけを

   楽しみに。

   ところが、おばけりんごを買う人は誰もいませんでした。それがリンゴだとは皆、信じ

   られなかったからです。仕方なくワルターはまた巨大リンゴをおぶい、死んでしまいた

   いような気持ちで家に帰りました。

   

   その頃、大食いの緑のリュウが、国中を荒らしまわり人々を脅やかしていたのです。

   秘密警察官でさえどうすることもできず、とうとうリュウに贈りものをすることにな
  
   りました。

   その時白羽の矢が立ったのがワルターのおばけリンゴ。

   さあリュウはおばけリンゴをどうするのでしょうか。
       
   ハラハラドキドキのフィナーレは是非絵本でご覧ください
 
   
        
   
   

 随想とまとめ


   この絵本は昔話風に始まり、リュウが登場すると一層ファンタジーらしくなります。

   ワルターがよそのリンゴの木を羨み、自分の木にもたった一つで良いからリンゴを実

   らせてほしいと祈るところなど、誰もが共感するでしょう。リンゴが生ったら生った

   で喜びと共に心配事が増え、人に盗られるのではないかと見張ったり、せっかく生っ

   たのだからと収穫するのが惜しくなったり。リンゴがどんどん大きくなって主人公の

   心境が喜びから困惑に変わるのは、欲望との葛藤を示すものでしょう。 

   誰しもが陥りがちな他者との比較という価値観も、決して人を幸せな方向へ導くもの

   さしではありません。
   
   しかしワルターを通して観ると、そこに何ともいえない人間的なユーモアと哀感が漂

    うのです。

   

   ところでリュウという架空の生物はギリシャ神話の中で、たとえば黄金のリンゴを守 

   るドラゴンとして登場します。黄金のリンゴはオレンジだともいわれます。

   一方リュウにリンゴを奪われるギリシャ民話もあります。たとえば『王さまのリンゴ

   の木』(ソフィア・ランボウカ:再話・絵、池澤夏樹:訳、ほるぷ出版 現在品切れ)

   この民話では、王さまのお城のリンゴの木が一本、毎年たくさんのリンゴを実らせま

   すが全部、大食いの緑のリュウに喰われてしまい、王さまは一度もリンゴを食べたこ
  
   とがなかったのです。
          
   しかし本書『おばけリンゴ』でワルターのおばけリンゴは、大食いのリュウを退治す 
 
   るにはちょうど良い大きさでした。 
 
   そして万事解決した後、彼はこれからのことを祈ったのです。「ふたつでいいから、リ
   
   ンゴがなりますように。ちいさなリンゴでいいのです。かごに入るくらいのがほ 

   しいのです」 

   

   本書を子どもたちにお話し会で読み語ったら、幼い子たちはワルターのお祈りを聞い

   て笑いました。すると小学生たちが発言したのです。 

   「今度は小さなリンゴがほしいだって。ばかだな。大きくなる前にリンゴをとればい 

   い。」「大きくなりすぎたのは、ワルターがわるいんだよ」「だけどおばけリンゴが 

   あったから助かったんじゃーん」「おばけリンゴは役にたつよ!」「大きすぎて運ぶの

   に困るけど」「そしたらね、みんなで食べちゃえばいい」「おばけリンゴ、食べてみ 
 
   たーい!!」

   さて、今度ワルターのリンゴの木に生るのはどんなリンゴでしょうか。

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