えほんのいずみ

絵本「ものいうほね」のあらすじや随想

 この絵本について―生きることの意味を豊かにしてくれ
           た、おしゃべりな骨
                                                                 

作・絵:ウイリアム・スタイグ

やく:せた ていじ

出版社:評論社
    
出版年月日:1978年6月30日

出版社による対象年齢:読んであげるなら 4才から
           自分で読むなら  小学低学年から

定価:1760円(本体1600円)

                         
 はじめに


   ニューヨーク生まれの絵本作家ウイリアム・スタイグ氏は、イラストや漫画の世界

   から、絵本へと表現活動を広げた作家です。60歳を過ぎてから子どもの本の創作を始

   め、『ロバのシルベスターとまほうの小石』で1970年度のコルデコット賞を受賞しま

   した。他にも『歯いしゃのチューせんせい』『アベルの島』(いずれも評論社刊)な

   どの受賞作があります。また子どもたちに人気の『ピッツァぼうや』『いやだいやだ

   のスピンキー』『みにくいシュレック』(いずれもセーラー出版刊)、『ゆうかんな

   アイリーン』(らんか社刊)、『ねずみとくじら』『馬車でおつかいに』『ぶたのめい

   かしゅローランド』(いずれも評論社刊)ほか魅力的な絵本が多数あります。

   
 あらすじと随想


   主人公は、キュートなぶたの少女パールです。

   うららかなある春の日、彼女は、学校から道草しながら帰りました。 

   町で働く人々を見たり、森に寄って休んだり。

   思わず春風の心地よさに「何もかもがすてき」とつぶやきました。
   
   その時「わしもそう思う」と声を上げたのは、去年の夏に、魔女のかごから草むら
   
   に落ちた小さな骨でした。言葉が話せるだけでなくラッパやくしゃみの音まで真似
     
   できるという不思議な骨だったのです。
   
   骨は、パールの家へ連れていってもらえると聞いて大喜び。
   
   

   ところが、そこへ現れたのが、ハロウインのお面をかぶった、3人の追いはぎでし
                       
   た。彼らは、バッグを渡すようにと拳銃と短剣でパールを脅しました。しかし、バッ

   グの中の骨が、蛇のシューシューという音とライオンのすごい吠え声を出したので、

   彼らは驚いて逃げて行ったのです。パールと骨は大笑い。

   

   しかし一難去ってまた一難。次にやって来たのは、悪がしこいきつねでした。きつね

   はパールを晩ごはんのごちそうにしようと思ったのです。骨はすぐに、きつねを狙う

   ワニの声で脅しましたが、その正体に気づいたきつねは、パールと骨を自分の隠れ家

   へ連れ帰りました。そしてふたりを部屋に閉じ込め鍵をかけたのです。

   ところが、きつねが台所でパールを料理しようとした時、かばんの中の骨は思わず魔

   法の呪文を唱え始めました。「イーブラム・シビブル!・・・」

   すると、きつねは・・・。 
  
   こうしてパールと骨は難を逃れ、一緒にパールの家へ帰っていったのです。骨は彼女

   の大切な家族になり、皆から尊敬されました。そして話したり歌ったり音楽を奏で

   たり。家族と毎日心豊かに暮らしました。
       
   
          

 随想とまとめ


   この絵本で印象的なのは、きつねの家にパールと骨が閉じ込められ、ピンチに陥る場

   面だと思います。

   彼女は“このまま死にたくない。今こそ本当に生きたいと思う!”と骨に訴えるのです。

   すると骨は、“勇気を出して!”と励ましました。

   そして、まさにパールが台所で死に瀕した時、骨は知らず識らずのうちに呪文を唱え

   だしたのです。それは、意識せずに骨が記憶していた魔女の呪文でした。 

   骨は、気味の悪い大嫌いな魔女の家で、いつも愚痴を聞かされ、辟易するような毎日

   を過ごしていました。しかし手も足もないので、そこから、逃げることもできなかっ
   
   たのです。 

   ところが今、大切なパールのピンチの時、何とか助けたいという切実な思いが、骨に

   魔女の呪文を思い出させたのでしょう。それがパールの命を救いました。きつねは

   ねずみのようにどんどん小さくなり、逃げていったのです。

   まさに「死を忘れることなかれ」。生きることの意味を見出した時にこそ、今まで忘 

   れていた無意識の「記憶」に光が当たり、宝の知恵になった瞬間だったのかもしれ

   ません。

   

   ここで思い出すのは、「メメント・モリ」です。

   メメント・モリというのはラテン語で、「死を忘れることなかれ」という意味を持っ
  
   た言葉です。古代ローマや中世ヨーロッパではドクロとしてシンボル化されたりし、
          
   メメント・モリが人々の生きる箴言として刻まれた歴史がありました。ペストなどの 
 
   疫病の流行と共に強まりましたが、段々と人々の意識から薄れていったようです。 
 
   しかし、ここ数年、世界中に新型コロナウイルスが流行し、再び「死」が意識される
   
   ようになった昨今です。

   死を忘れないでいられるのは、命が与えられている証であり、裏返せば、天から授

   かった命の意味を見出せるということでもあります。

   

   この絵本の主人公パールが死に瀕した時、新たに生きたいという願いに駆られたの

   は、かけがいのない友である骨とのコミュニケーションがあっての気づきだったで 

   しょう。死が主人公に迫った時、骨も、パールが唯一無二の大事な友だちである 

   ことを確信し、何とか役に立ちたいと望みました。 

   本作に登場した骨のように、動くことができなくても、言葉は他者を動かすことが

   できますし、人を感動させることもできるのです。この絵本は言語表現だけではな 
 
   く、音声や音楽表現のすばらしさについても新たな気づきが得られる作品ではない

   でしょうか。

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