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絵本「しあわせなワニくん あべこべの1日」のあらすじや随想

この絵本についてーユーモアいっぱいのしあわせな絵本

神沢利子・作

はた こうしろう・絵

主な対象年齢:6歳・小1・小2~ 

出版社:ポプラ社 

出版年月日:2013年 7 月

価格1430円(本体1300円)


   
 はじめに


   本作は『くまの子ウーフ』とは趣を異にする、神沢利子さんの「ワニくんシリーズ」 

   の一冊です。第二弾は『しあわせなワニくんかんちがいレストラン』 。

   画家のはたこうしろうさんオリジナル作品には『なつのいちにち』(偕成社)、『に 

   ちようびの森』(ハッピーオウム社)があります。また、はたさんイラストの人気絵 

   本には、『馬の耳に念仏』(斉藤孝さく、ほるぷ出版)『てのひらむかしばなし もも

   たろう』(長谷川攝子作、岩波書店)『どしゃぶり』(おーなり由子作、講談社)

   『あかちゃんがきた』(角野栄子さく、福音館書店刊)『それで、いい!』(礒みゆ

   き作、ポプラ社)『ゆらゆらばしのうえで』(きむらゆういち作、福音館書店)『は

   じめてのオーケストラ』(佐渡裕原作、小学館)「ショコラちゃんシリーズ」(中川

   ひろたか作、講談社)その他たくさん秀作があります。『2ひきのカエル そのぼ

   うきれどうすんだ?』(クリス・ウォ―メル作・絵、徳間書店)などの愉快な訳本も。


 あらすじと随想


   主人公のワニくんは、ワニのももこさんが大好き。   

   初めてデートにこぎつけたので、うれしくてたまりません。明日の午前10時に「みな   

   とのみえるおか公園」で会えると思うと、前日からソワソワドキドキが止まらない!   

   その時、名案を思いつきました。昼から寝てしまえば、目が覚めたらもう明日になっ

   ているはずだと。

   ところが、ワニくんは夕方6時に目を覚まし、もう翌朝だと勘違いしたのです。 

   本当は夜なのに朝だと思い込み、だんだん暗くなっていくことを不思議に思って、いつ 

   も相談にのってくれる友だちのネズミくんに電話しました。

   何と可愛い誤解でしょうか!

   ところが、その時、ネズミくんはネズミくんで音楽会デートの約束があり、チケット

   が行方不明なので、イライラしていたのです。それを聞いたワニくんは、チケットの

   在りかについてヒントを出し、ネズミくんを助けました。

   するとネズミくんは“いつもあわてんぼうのワニくんに今日は助けてもらったね。今

   日はあべこべ、あべこべ。すてきなあべこべの日だ!”と、言ったのです。

   ワニくんも、目をパチクリとさせ、“今日は何でもあべこべだ。そんなすてきな日に

   モモコさんとデートなんて、何てしあわせなんだろう”と思いました。

   そしておしゃれをし、夜九時過ぎに「みなとの見えるおか公園」へ行って、モモコ

   さんを待ったのです。

   ところが、空にはキラキラ昼の星が光っている・・・と思いきや、雪が降り始めまし

   た。そして、ひと晩で雪だるまになってしまったワニくん!  

   翌朝、約束の時間にモモコさんは、凍ったワニくんを発見して驚きました。幸せいっぱ   

   いの結末は、是非、絵本でお楽しみください。   

   
   
 随想とまとめ


   ドラマティックな結末には、あべこべなプロットが必要なのかもしれません。

   雪が降って凍えそうな晩ほど、モモコさんを待つワニくんの想いが熱いという結末は 

   圧巻でしょう。 

   ワニというある意味で獰猛でグロテスクでさえある主人公が、イメージとは逆に微笑

   ましく描かれているところが、このあべこべ絵本の最高の魅力かもしれません。 

   画家・はたこうしろうさん描く表情豊かなワニくんは、特にそうです。しょっちゅう 

   逆立ちしているところもどこか子どもっぽく、一生懸命であればあるほど、可愛いの 

   です。もしかすると、逆立ちはあべこべの象徴かもしれません。

   読者の子どもたちも、ワニくんの無邪気な勘違いに、笑いがとまりません。
   
   

   モモコさんのことを想って一途なワニくんは、雪だるまになり、モモコさんに掘り

   出されます。雪に凍えてまで自分を待っていてくれたことに、モモコさんの感激も一 

   入です。でも、凍ちゃったワニくんは頼りなくて、ワニくんの理想とするワニ像とは 

   大違いです。そのように、いろいろ勘違いをしても平気なところが、愛すべきワニくん

   の魅力なのでしょう。  

   

   無邪気で健気なワニくんに癒されたくて、私は繰り返しこの絵本を読んでいます。 

   最近、人と約束してもドタキャンされることが多く、レジリエンスに乏しい自分を“何 

   て情けないのだろう”と落胆することしきりです。ですから期待を裏切られても、「何 
 
   としあわせなのだろう」と受け止めるワニくんの柔軟な適応力に、はっとさせられま 

   す。ワニくんのように”逆立ちして、あべこべでいこう!”と励まされます。 

   「いつも喜んでいなさい」(いつも幸せであってほしい)という聖書の聖句(テサ 

   ロニケ人への第一の手紙5章16節)を思い起します。 
      
   
         
   
      
  

  

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