えほんのいずみ

絵本「すずのへいたいさん」のあらすじや随想
 
この絵本について: 一本足のおもちゃの兵隊さんの一途な恋

原作: H・C・アンデルセン 

文: 角野栄子 

絵:ささめやゆき 

出版社:小学館 

出版年月日:2004年 7月20日

定価: 1980 円


   
 はじめに


   原作は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話“THE STEADFAST TIN  

   SOLDIER”(「しっかり者のすずの兵隊」)です。『魔女の宅急便』の作者、角野 

   栄子さんがそれを再話し、画家ささめやゆきさんとのコラボで絵本化したのが本作 

   です。

   素朴で温かなささめやさんの絵と、とてもわかりやすい角野さんの再話文の織り成す 

   この絵本は、ひとりで本作を読める子どもたちにも理解しやすく、切ないけれど心にぬ

   くもりを遺してくれるでしょう。 
 
   
 
 あらすじと随想


   ある男の子のお誕生日に、錫(すず)でできた小さなおもちゃの兵隊さんが贈られま

   した。

   片手に鉄砲を担ぎ、赤と青のきれいな制服を着た、25人の兵隊たちです。みんな、一

   本のすずのスプーンから生まれた兄弟でしたが、その中にひとりだけ一本足の兵隊さ

   んがいました。最後に作られたので、材料のすずが足りなかったのです。でも、まっ

   すぐ前を見て、一本足でしっかりと立っていました。

   

   その兵隊さんは、踊り子人形に心をひかれました。踊り子さんがバレリーナとして一

   本の足を高く上げていたので、兵隊さんからは、自分と同じように一本足に見えたの

   です。

   夜になると、おもちゃたちは、にぎやかに遊び始めましたが、その中で動かないの

   は、一本足の兵隊さんと踊り子さんだけでした。

   夜中の12時になると、びっくり箱が開いて、中から真っ黒な鬼が飛びだしました。黒
   
   鬼は、兵隊さんが踊り子をじっと見つめているのが不愉快だったので、あまり見ない
   
   ようにと命令したのです。でも、兵隊さんが聞こえないふりをしたので、黒鬼は怒り

   ました。

   

   翌朝のこと、持ち主の男の子が、兵隊さんを窓辺に立たせた時、急に風が吹いて、一

   本足の兵隊さんはまっ逆さまに外の道へ落ちてしまいました。夕べの黒鬼の意地悪な

   しわざかもしれません。男の子は、あわてて兵隊さんを探しにいきましたが、見つか

   りませんでした。

   やがて雨が降った後、町の少年たちが兵隊さんを見つけ、新聞紙の舟に乗せました。

   すると舟は水かさの増した水路をすごい速さで流れていったのです。それでも兵隊さ

   んは、鉄砲をかつぎ、しっかりと前を見て立っていました。舟はトンネルに入った

   り、どぶねずみに追いかけられたりしながら、運河に落ちて行きました。兵隊さんは

   “もうあの踊り子さんには、会えないんだ”という悲しみを抱えて、水の中へ沈んで

   行ったのです。

   ところが、思いがけずに大きな魚に呑み込まれました。魚は釣りあげられ、偶然に兵隊

   さんが元いた家に運ばれ、運良く魚のおなかの中から見つけ出されたのです。

   その家には、前と同じように踊り子さんがいました。兵隊さんと踊り子さんはお互い

   に見つめ合いましたが、何も話しませんでした。

   

   その時、小さな男の子が、すずの兵隊さんを暖炉の火の中に投げ込んだのです。 

   兵隊さんはあっという間に焔にのまれ、どんどん溶けていきました。それでも兵隊さ

   んは踊り子さんを見つめ、鉄砲をかついでしっかりと立っていました。

   すると、今度は踊り子さんが一陣の風に吹き飛ばされて、暖炉の中の兵隊さんのそばで

   めらめらと火に焼かれてしまいます。

   次の朝、家の人が暖炉の掃除をして、意外なものを見つけました。それは、何だったの

   でしょうか。  

   心にしみる結末は、是非絵本でご覧ください。

   
   
 随想とまとめ


   本作品の主人公、おもちゃの兵隊さんは、数奇な運命に翻弄され、家の外へ放り出さ 

   れたり、運河に落ちて魚に飲み込まれましたが、どんな時も、踊り子さんへの想いは 

   変わりませんでした。 

   一途な想いを胸に、鉄砲を担ぎ一本足で前を向いて立っていたのです。兵隊さんの属

   性ともいえる誇り高さや雄々しさが擬人化され、だからこそ「しっかり者」という原 

   作のタイトルにもなったのでしょう。

    

   最終場面では、小さな男の子によって暖炉の中へ投げ込まれてしまいます。彼は兵隊

   さんをちっぽけなものと思ったのでしょうか。それとも、あの黒鬼のしわざだったの

   でしょうか。
 
   しかし暖炉で燃え尽きた後、兵隊さんの愛情の証といえるものが見つかりました。こ
 
   の絵本では、それが、絵と文の両方で確認できるのです。
 
    また、兵隊さんに寄り添う踊り子さんの想いも明かされます。
 
   
  
   ふたりの恋は現世では実りませんでしたが、命の瀬戸際で、火に焼かれるほどの熱い

   想いを結晶させました。この絵本をひとりで読める子ども達は、ふたりの姿が消えて 

   しまっても、あとに遺るものによって、ほっとするようです。

   暖炉に遺された徴(しるし)から、ふたりの愛が証明されたと感じられるからではな

   いでしょうか。 
     
   
         
   
      
  

  

プロフィール

ネッカおばあちゃん

カテゴリー

  ねこ   クリスマス

クリスマス絵本一覧

COPYRIGHT © えほんのいずみ ALL RIGHTS RESERVED.

▲ ページの先頭へ