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絵本「はるかぜのたいこ」のあらすじや随想
 
この絵本について・・ふしぎなたいこに春の元気がもらえる
                                                                 

作:安房直子  

絵:葉 祥明 
  
対象年齢:4歳頃~ 

出版社:金の星社
      
出版年月日:1980年11月

定価: 1430 円


   
 はじめに


   この絵本は、作者・安房直子さんと画家・葉祥明さんによる抒情的でやさしいパステ 

   ルカラーの物語です。表紙絵には春色の題字と、どこか不安で寒そうなうさぎが 

   登場して、読者の好奇心を誘います。 

   それだけに最終場面の美しさには、思わず歓声を上げたくなるでしょう。

   
 
 あらすじと随想


   主人公は、さむがりうさぎです。

   ある秋のこと、うさぎは厚着をして、くまの楽器屋「ふしぎや」を訪ねました。そし

   てお店の前で「はっくしょん」と大きなくしゃみをしたのです。

   それに気づいた優しそうなくまの店主は、「いったい どうしたんです。かぜでもひい

   たんですか」と、声をかけました。

   

   すると、うさぎは、“寒くてたまらないから、何かあったかくなる、いい方法はない

   でしょうか?”と尋ねました。そこで、くまはお店の真ん中に大きな大きなたいこを

   運んでくると、“これをどーんと、たたいた後、目をつぶってごらんなさい。すぐに

   あったかくなるから”と勧めたのです。

   

   うさぎはとても信じられない気がしましたが、思いきって、マスクも手袋もえりまき
   
   もはずし、力いっぱいドーンとたいこを叩きました。それから目をつぶったのです。
   
   すると、あったかい風がふうっと吹き、春のよもぎ野原にいるような気持になりまし

   た。

   さあ、春風を呼ぶ不思議なたいこの音に誘われて、どんな景色が広がるのでしょうか。

   そしてうさぎは、そのたいこをどうしたか、とても楽しみです。

   
   
 随想とまとめ


   実は、私にとっては、まだ冬が続いているようなこの頃です。現在、呼吸器治療中な 

   のですが、マフラーが無いと首が寒いのです。それなのに、マフラーを失くすという 

   失敗をやらかしたので、新しいえりまきの到着を待っているところです。(笑) 

   本当は、この絵本は寒い季節にふさわしい作品なのでしょうが、心に一抹の冬を抱え

   る私には、是非皆さんと春の喜びを共感したい一冊となりました。 

   

   たいこの音には、生命力豊かな迫力が感じられます。

   この絵本では、うさぎがドーン、ドーンとたいこを10も20も叩き、目をつぶる度に景
 
   色が変わり、ワクワクするのです。 

   きっと、目をつぶるという動作にも、大きな秘密があるのでしょう。 

   目をつぶるというのは、現実からの情報を遮断し、想像力を活性化させるのでは
 
   ないでしょうか。 
 
   目に見えるものだけに囚われていると、真実を見逃してしまうのかもしれません。

   祈る時に目を閉じることが多いのも、そうした理由があるのでしょう。

   私がキリスト教主義幼稚園に通っていた5歳の頃、夜、家族に「おやすみなさい」と 

   いうと、クリスチャンではない継母から「ちゃんとお祈りしたの?お祈りしてから寝
 
   なさい」と言われました。そこで私は目をつぶり、両手を組んで、心の中では小生意 
 
   気にも、「神さま、ママは神さまにちゃんとお祈りしていないのに、なぜ私にお祈り
 
   させるのかな?おしえてください」と、祈りしました。私にとってのその当時のお祈
 
   りは、愚痴っぽかった気もします。と同時に、納得のいかない理不尽な強制に対し 
  
   て、目をつぶる手段でもありました。 

   目を閉じると、集中力が増してお祈りモードになれるのは、本当に不思議です。 

   だから、優しいくまの楽器屋さんが、うさぎにたいこを叩くように勧めるだけでな

   く、たいこの音の余韻を聴き、想像力をより豊かにふくらませるために、目を閉じ

   ることを促したのは、理に適っていると思えます。
 
   そして、さむがりうさぎの思い描いた美しく暖かい春を、読者の私たちが目に見える 
     
   ように追体験できるのも、絵本という媒体の何とすばらしいところでしょうか。

   
        
   
      
  

  

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