えほんのいずみ

絵本「たからもの」のあらすじや随想

 この絵本について―夢が告げる宝もの―

出版社による対象年齢:5歳から
  
作:ユリ・シュルビッツ
    
訳:安藤紀子

出版社:偕成社

出版年月:2006年5月

定価:1,320円(本体1,200円)

 はじめに


   この絵本は、中世の風景画のように美しく、祈りのようにどこまでも静謐(せいひつ)な

   シュルビッツの画風が、心ゆくまで味わえる作品です。

   1980年度コルデコット賞銀賞受賞作。

   イギリスの昔話「スワファムの行商人」のストーリィを下敷きにしていると思われ

   ます。夢をめぐるこの不思議な物語の絵本は、5歳位からおとなまで、多く

   の読者の心に残るでしょう。


 あらすじ


   昔、アイザックという名の初老の男がいました。

   暮らしはたいそう貧しく、持ち物といえば数冊の本くらいで、空腹のまま眠りにつ

   く日もありました。



   ところが、ある晩、アイザックは夢を見ました。

   その夢の中で、「都へ行き、宮殿の橋の下で宝ものをさがしなさい」という声を聞

   きます。最初はただの夢にすぎないと思っていました。しかし同じ夢を三度も見た

   ので、もしかすると本当かもしれないと思い直し、都へ宝さがしに行く決心をした

   のです。



   すでに若くはないアイザックにとって、暗い森を抜け高い山を越え、ほとんど徒歩

   で行く孤独な旅路は、たやすいものではありませんでした。

   けれども、都へ行って宝ものをさがすという希望に、支えられました。

   やがて彼は、宮殿のある都へたどり着きます。



   そして、ある日、彼が宮殿の橋のそばにいると、りっぱな衛兵隊長が「なぜいつも

   ここにいる?」と、声をかけてきました。

   そこで彼は、正直に夢の話をしたのです。

   すると隊長は、「なんてやつだ。ゆめをまにうけて、くつをすりへらすとは!いい

   か、わたしもいつだったかゆめをみた。あのゆめをしんじるなら、すぐさまおまえ

   さんの町へ行って、アイザックというおとこのいえのかまどのしたで、たからもの

   をさがすだろうな」と笑いながら言ったのです。

   そこで、アイザックは丁寧におじぎをし、急いで帰途につきました。そして、はや

   る心で自宅のかまどの下を掘ってみると、期待どおりに宝ものが出てきたのです。

   夢は真実でした。



 あらすじと随想


   アイザックが宝ものを手に入れたのは、なぜでしょう。

   それは、三度見た同じ夢を真実のことと信じて、旅の苦労もいとわなかったからか

   もしれません。

   そして、宝ものが見つかった事実から、彼は夢を天から授かったものと考えたので

   はないでしょうか。

   感謝して「祈りの家」を建てています。

   昔話「スワファムの行商人」の方でも、宝物を掘り当てた行商人は、教会堂を建て

   直しています。



   アイザックはさらに、祈りの家の壁に「ちかくにあるものをみつけるために、とお

   くまでたびをしなければならないこともある」と刻みました。

   彼の稀有な体験に基づいたこの言葉は、含蓄に富んだメッセージとして、私たち読

   者の心にも刻まれるでしょう。

   解釈がずれるかもしれませんが、日常のささやかなこと、身近にいる人や身近にあ

   るものが宝ものだと気づくまでには、長い時間や労苦を要する場合が多いのかもし

   れません。



   さて、宝ものを見つけたアイザックは、それを独り占めしたのではなく、衛兵隊長

   にもすばらしいルビーを贈り、感謝の気持ちを伝えています。

   その後は、ひもじい思いをすることもなく、心穏やかに暮らしたそうです。

 

   夢は、聖書や昔話や深層心理学だけでなく多くの領域で扱われています。

   この絵本のように、その示唆することもさまざまでしょう。

   夢を見ることによって、私たちの心は意識と無意識のバランスがとれて安定するそ

   うですし、さらに、有益な気づきが得られたりもするのですから、夢は天からの贈

   りもののようにも思えます。



プロフィール

ネッカおばあちゃん

カテゴリー

  ねこ

クリスマス絵本一覧

▲ ページの先頭へ