えほんのいずみ

絵本「チキン・サンデー」のあらすじや随想

 この絵本について―愛とまごころが、
               信頼を生んだ実話の絵本―

作:パトリシア・ポラッコ

訳:福本友美子

出版社:アスラン書房

出版年:1997年

定価1,650円(本体1,500円)

 はじめに


   本書は、作者パトシリア・ポラッコさんが小学校時代に体験した、イースター(キリ

   スト教の復活祭)をめぐっての心あたたまる絵本です。

   日本図書館協会選定、厚生省中央児童福祉審議会推薦図書。


 あらすじや随想


   主人公の「わたし」は、ロシア系アメリカ人。

   近所に住む黒人の少年スチュワートやウィンストンの兄弟、そして彼らの優しいユー

   ラおばあちゃんとも、家族のようなおつきあいをしていました。


   

   ある時、私たちが教会へ行った帰り、おばあちゃんはコジンスキー帽子店の前で、お

   気に入りの帽子を見てうっとりとため息をつきました。それから夕飯にお手製のお料

   理をごちそうしてくれたのです。

   私たちは、おばあちゃんがフライドチキンを作り、語らいのひとときを用意してくれ

   る楽しい日曜日のことを「チキン・サンデー」と呼んでいました。

 
                

   さて、イースターが近づいた日、私たちは、大好きなおばあちゃんにあの帽子をプレ

   ゼントする計画を立てました。しかし、自分たちの貯金だけでは足りないので、コジ

   ンスキーさんに頼んで帽子店で働かせてもらおうと、お店の裏口へ行ったのです。


   

   ところが、運悪く私たちは、どこかの男の子たちが仕掛けたいたずらの犯人だと、誤

   解され、コジンスキーさんを怒らせてしまいました。そこで彼は、ユーラおばあちゃ

   んに怒りの電話をしたのです。


   

   私たちは帰ってから、泣きながら真実を話しましたが、ユーラおばあちゃんへのプレ

   ゼントのことは秘密にしておきたかったので、帽子店へ行った理由も説明できず、窮

   地に立たされてしまいました。

   それでも、おばあちゃんは、三人の無実を信じてくれました。


   

   そして、今まで試練の人生だったコジンスキーさんのところへ、心をこめて弁明しに

   行くように勧めたのです。

   そこで、私たちは、イースターをお祝いするイースター・エッグを一生懸命作り、そ

   れを持って帽子屋さんを訪ねました。


   

   すると気むずかし屋に見えたコジンスキーさんは、心のこもったイースター・エッグ

   に故郷ロシアのピーサンクを懐かしみ、誤解を解きに来た三人の勇気をたたえて、お

   茶に誘ってくれました。そしてお金が必要ならその美しいピーサンクをお店で売って

   みたらと、勧めてくれたのです。さらに心のこもったプレゼントもありました。

   その後のうれしい結末が楽しみです。



 随想とまとめ


   この絵本では、愛とまごころが、人との信頼を築いていく場面が感動的です。

   おばあちゃんを喜ばせようと労する孫たちの愛。

   また、コジンスキーさんに卵をぶつけた犯人として、孫たちが疑われたことを知った

   時の、ユーラおばあちゃんの言葉。

   「ちびさんたちを信じよう。わたしゃ、どんなときにもうそをついちゃいけないっ

   て、おまえたちを育ててきた。それは、神様だってごぞんじだ。だから、おまえたち

   がやってないっていうんなら、わたしゃ信じることにするよ」。


   

   そしてコジンスキーさんも、驚くほど懐の深い紳士でした。

   誤解を解こうとする子どもたちの話に耳を傾け、彼らがユーラおばあちゃんに帽子を

   プレゼントしたい一念も見抜きました。

   そして、ユーラおばあちゃんと子どもたちの麗しい愛を妬んだりせずに、すべてを結

   ぶ帯のような愛で、その願いが叶うように手助けしてくれたのです。そのうえ、自分

   の利益を一切求めませんでした。

   人は、愛の援護を受けたとき、自らも愛を持って行動を起こせることに、気づかされ

   ます。


   

   ところで、作者パトリシアさんの絵からは、主人公の家とユーラおばあちゃんの家の

   宗教や文化の違い、コジンスキーさんが、ナチスの収容所で負った辛苦も想像できる

   ようです。

   しかし、そうした登場人物の民族、文化、宗教の違いを超え、イースターを通して、

   主人公たちが人と新しくまごころで出会った祝福を、この絵本は物語っているのかも

   しれません。



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