えほんのいずみ

絵本「ウエズレ―の国」のあらすじや随想

 この絵本について―自分ならではの夢を実現した少年

作者:ポール・フライシュマン

絵:ケビン・ホークス

訳:千葉茂樹

出版社:あすなろ書房

出版社の対象とする読者年齢:小学校低学年~高学年

発売日:1999年6月

定価:1,540円 (本体価格1,400円)

 はじめに



   本書は、夏休みの自由研究について考える子どもたちを励ますような絵本だと思いま

   す。

   作者は『種をまくひと』を書いたポール・フライシュマン氏。

   絵はケビン・ホークス氏ですが、登場人物についての写実的で確かな描写と美しい色

   彩が、ストーリィを生き生きワクワクと伝えてくれます。

   
   
 あらすじと随想


   主人公は、小学生のウエズレ―少年。

   彼の町の男の子たちは、皆、モヒカン刈の髪型で、ピザとコーラとサッカーが大好

   き。しかしウエズレ―は髪型にも趣味にも自分の好みがあり、彼らの常識とは異なっ

   ていたので、仲間はずれにされました。

   友だちはいませんでしたが、あたたかい両親がいました。
 
   お父さんの口癖は「今に、きっと役立つさ」という言葉。


   

   さて、夏休みが近づいたある日、ウエズレ―の頭にひらめいたのは、夏休みの自由研

   究として、自分だけの作物を育て、自分だけの文明をつくろうという壮大な夢でし

   た。学校で習った、「種子は風に運ばれ、良い作物が文明を作る」ということが、今

   こそ自由研究で役立つと思ったのです。


   

   そこで次の日、庭を耕し、畑に種子が宿るのを待ちました。

   すると、風によって運ばれてきた不思議な植物の種が、五日後にウエズレ―の畑で発

   芽したのです。


   

   百科事典にも載っていない、赤い花のような不思議な植物は、あっという間に成長

   し、おいしい実を実らせました。

   ウエズレ―はそれを毎朝食べ、自分で発明した「きかい」で実をしぼり、おいしい

   ジュースも飲み放題!

   茎から採った繊維で帽子を作り、自分で作った機織り機で布を織り、涼しくて着やす

   い服も作りました。

   こうして彼は、庭に守られた環境で、毎日わくわくしながら、念願のかっこいい隠れ

   家暮らしをしたのです。

 
   

   ウエズレ―はさらに独自の時間の単位や数の数え方を創り、庭にある独自の文明と文

   化を持つ自分の国を「ウエズランディア」と名づけました。

   そして、両親を招待したのです。

   お母さんは、息子を見て、あんなに幸せそうな顔を見たのは初めて!と言いました。


   

   やがて彼は、そこで使うすべてのものに名前を付け、ウエズレ―語を発明しました。

   そして、自由研究の仕上げに、ウエズレ―語でウエズランディアの歴史を書いたので

   す。


   

   町の子たちは、ウエズランディアを覗き見し、ウエズレ―のやることなすことに興味

   津々!そこでウエズレ―は彼らを招きいれ、作物から生産する香油の作り方を教えた

   り、譲ってあげたり、一緒に遊べる楽しいゲームも考案しました。


   

   さて、九月に学校が始まった時の、町の子どもたちの感動的な変化は是非絵本でご覧

   ください。


   
   
 随想とまとめ


   表紙のウエズレ―の何と凛々しいこと!喜びと希望に満ちあふれています。

   本書では、ウエズレ―がサル-シュと名づけた誰も知らない植物の種を育て、やがて

   彼自身が自分ならではの国で、ウエズランディア文明やウエズランディア文化を築い

   ていくプロセスが、具体的な生活に即して魅力的に描写されています。

   ですから読者の小学生の皆さんも大人の皆さんも大いに楽しむことができるでしょ

   う。


   

   ウエズレ―の国が築かれた背景には、子どもの成長を長い目で見守る両親の愛情や、

   天から与えられた人生には何一つ無駄なものはないという前向きな姿勢が、礎として

   あったのではないでしょうか。

  
   

   現在、小学生の間ではマインクラフトというおもしろいコンピュータゲームが人気の

   ようです。

   ゲームの中で自分の世界を創造し、家などの建築物を作るにも、自分でストーリィを

   組み立てながらゲームを進めていくことになります。

   何かを築いたり造ったりするには、まず道具や材料を自分で集めるところから始める

   ため、ストーリィはより複雑になり、想像力や忍耐力や創造性が養えるのかもしれま

   せん。


   

   一方、この絵本では、主人公自身が生活の基地を自分で作るだけでなく、自分らしさ

   を意味づけていきます。また文明が生活を進化させるプロセスを体験し、さまざまな

   人間関係やぬくもりも味わえるでしょう。

   読者の子どもたちは、それらを追体験することで、視野を広げ、思考力を深め、感性

   を豊かにすることもできるのではないでしょうか。


   
   

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