えほんのいずみ

三人の主人公の「黒」に魅せられる―自分らしさを発揮する時

 はじめに


   絵本は、絵でストーリーが語られることが多いので、おのずと色の持つ意味が浮き彫

   りになるようです。今回は、「黒」の表す意味について、『くれよんのくろくん』

   『まっくろネリノ』『こうもりのルーファスくん』の三冊を通して、考えてみま

   しょう。

  
 絵本「くれよんのくろくん」について



作・絵:なかやみわ

出版社:童心社

 
 「くれよんのくろくん」のあらすじ


   主人公は黒色くれよんのくろくん。

   新しいクレヨンの箱から、黄色やピンク、赤に緑のクレヨンたちが飛び出して、白い紙

   いっぱいに色とりどりの美しい花や木を描きました。

   しかし、くろくんだけは、別。

   黒で絵を描かれたら、自分たちの色が台なしになるからと、みんなに仲間はずれにさ

   れたのです。

   くろくんはクレヨンなのに、自分だけ絵が描けないなんて、悲しくなりましたが、そ

   れを助けたのは、シャープペンシルのお兄さん。

   彼をなぐさめ、何と画面を全部黒でぬりつぶすよう、こっそりくろくんに勧めたので

   す。そんなことして、大丈夫なのでしょうか。


   

   最後はシャープペンシルの出番です。

   さて、真っ黒になった画面から新たに生まれた美しいものとは、何だったのでしょう?

   それは、私たちを魅了する、夏の夜空の美しいものでした。


   
   
 「くれよんのくろくん」についての随想


   くれよんのくろくんは黒であるがゆえに仲間にうとまれ、孤独でした。

   しかし、その孤独感が救われたのは、シャープペンシルのお兄さんのくろくんに対す

   る思いやりとすばらしいアイディアのおかげです。そうした斬新な発想をもった助け

   手の存在、いわば大人の在り方が、子どもたちの友人関係に大きな変化をもたらすこ

   とはいうまでもありません。

   
   
 絵本「まっくろネリノ」について



作:ヘルガ・ガルラー

訳:やがわすみこ

出版社:偕成社

 
 「まっくろネリノ」のあらすじ


   主人公ネリノは真っ黒な鳥。

   彼には、きれいな色をした四人の兄さんと、両親がいました。でも、ネリノが黒いの

   で、兄さんたちは遊んでもくれないし、いつもひとりぼっち。

   どうしたらきれいな色になれるかが、悩みの種でした。

   ところが、そんなある日、兄さんたちが、行方不明になってしまったのです。みんな

   で探しまわると、金の鳥かごに、だれかが閉じ込めたことがわかりました。

   兄さんたちはきれいな色なので捕まってしまったのです。

   そこで、ネリノは夜一人で、救出に向かいました。

   ネリノだからこそできたのです。そして・・。

   
   
 「まっくろネリノ」についての随想


   ネリノは黒一色の鳥であるがゆえに兄弟の中で孤独を味わっていました。

   その孤独感が癒やされたのは、彼の「黒」が兄弟の窮地を救ったとき。つまり、兄弟

   は、救ってもらってはじめてネリノの真価に気づいたのです。

   と同時にネリノ自身も、兄弟の救済を通して、黒の自分らしさを肯定的に評価できる

   ラッキーチャンスを得たのでした。

   
   
 絵本「コウモリのルーファスくん」について



作:トミ・ウンゲラー

訳:いまえよしとも

出版社:BL出版

 
 「コウモリのルーファスくん」のあらすじ


   主人公は、夜の世界に生きるコウモリのルーファスくん。なかなかかわいい顔をして

   いるのに、黒一色の自分の姿にうんざりしていました。


   

   ある晩、カラー映画を見て色彩にめざめ、昼間にあこがれて、拾った絵の具でカラフ

   ルに変身しました。

   すると変な生きものに驚いた人間たちが、何と彼を銃でうち落としたのです。

   ところが痛手を負ったルーファスくんが落ちたのは、さいわい蝶のコレクター、ター

   タロ先生の庭。

   そこで先生から手厚い治療を受け、ふたたび元気を取り戻したのです。

   それからというもの、二人は大の仲良しになりましたが、ルーファスくんは自分の体

   に合ったほら穴が恋しくなり、帰っていきました。

   しかし夜になると彼は・・。


   
   
 「コウモリのルーファスくん」についての随想


   さて、自分の色にうんざりし、自分でないものをめざしたコウモリのルーファスくん。

   危ない目にはあったけれど、大切な友だちを得ることができました。そして、自分ら

   しさも友だちも大切にしながら生きていくのです。

   
   
 全体についての随想とまとめ


   人は自分に無いものに憧れ、自分らしくないものになろうと思い立つことがあります。

   しかし、うんざりするような自分らしさを自分で受け容れ肯定できた時、生かされて

   いることの幸せを喜べるのではないでしょうか。


   

   私自身も実父と継母から「生きていることを申し訳ないと思え」というメッセージを

   乳幼児期から絶えず受けてきたように思います。

   生母が早逝し、継母の世話にならなければならなかったのですから、それも仕方のな

   いことだったのかもしれません。
    
   ですから自分らしさを肯定などできず、責めてきました。

   しかし大人になってから、カウンセリングの学びを通して、人は何ができてもでき

   なくても、天から愛され生かされている命そのもの、存在そのものに価値があると

   知り、うんざりするような自分でも、かけがえのない自分のそのままを肯定でき

   るようになりました。


   

   今回とり上げた絵本の三人の主人公は、最初はうんざりしていた「黒」という自分ら

   しさを周りの人との関係でそれぞれに見直し、謳歌できるようになったのですから、

   大きな喜びが得られたのではないでしょう。


   
   

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