えほんのいずみ

絵本「わすれもの」のあらすじや随想

 この絵本について―忘れものをして気づくこと

作・絵:豊福まきこ

出版社:BL出版

出版年月日:2017年3月

定価:1,430円(本体価格1,300円)

 
 はじめに



   「忘れもの」のせつない気持ちをめぐる豊福まきこさんのデビュー作です。

   ハラハラドキドキする情感豊かなストーリィ、そして主人公や登場人物の命あふれる

   絵が、読者の皆さんをあたたかく包んでくれるでしょう。

   
   
 あらすじと随想


   小さなヒツジのぬいぐるみが、大きな公園のベンチにぽつんと座っていました。

   ミナちゃんという女の子の忘れものでした。

   でも、ぬいぐるみのヒツジはせつない思いで待っていたのです。

   “忘れものは、捨てられたんじゃないから、迎えに来てもらえるんだ。ミナはきっと

   来るよ”と


   

   親切なねこのおかあさんが彼に、今夜は雨になりそうだから、うちに来るかい?と声

   をかけてくれましたが、“ぼく、わすれものだもの。ここで待ってなきゃ”とベンチ

   から離れようとしませんでした。

   その晩、ぬいぐるみは雨にぬれながら、公園でミナちゃんや家族と楽しく過ごしたピ

   クニックのことを思い出しました。

   でも心細くなって“ぼくを忘れるなんて!”とミナちゃんに腹を立てたり、逆に、

   “ミナは友だちのぼくがいなくても眠れたかな?泣いていないかな?”と心配した

   り・・。そのうち、本当に迎えに来てくれるのだろうかと不安がこみ上げ「ぼくもお

   うちにかえりたいよう・・」と泣きたくなりました。

   その時、朝もやの向こうから、小さな人影が近づいてきたのです・・・。


   
   
 随想とまとめ


   本書は、不安を抱えながら迎えをじっと待つ「わすれもの」の気持ちが細やかに描か

   れていますので、子どもたちの共感を呼びますし、持ち主との再会の安堵感が胸にし

   みます。

   おとなの皆さんも思わず涙する作品かもしれません。

 
   

   しかし、思いがけない場面で、持ち主ミナちゃんが忘れものを探しに来ていたり、親

   切なねこの親子がその後のぬいぐるみをそっとのぞきに来る絵も随所にあったり、そ

   のぬくもりに癒やされるでしょう。

 
   

   ところで、「忘れもの」というと、死の世界から孫に忘れものを届けにきたおじい

   ちゃんの絵本を思い出します。

   拙著『絵本の泉』(いのちのことば社)でも紹介させて頂いた『おじいちゃんがおば

   けになったわけ』(あすなろ書房刊)という、心あたたまるデンマークの絵本です。

   おばけといっても怖くはなく、子どもにとって死別の悲しみを癒やし、グリーフワー

   クにも役立つ絵本でしょう。


   

   孫のエリックを可愛がって、よく一緒に遊んでくれたユーモアあふれる「じいじ」。

   天に旅立ってからも、何か忘れものをした気がしてエリックのもとに戻って来まし

   た。しかし、ふたりで過ごした楽しい思い出をたどるうち、忘れものが何かわかるの

   です。

   それはかわいい孫に伝えたかった、愛情あふれる別れの言葉でした。


   

   忘れものといっても、目に見えるモノだけではないのですね。

   実は、ヒツジのぬいぐるみも、迎えに来たミナちゃんの「わすれて ごめんね」という

   言葉に癒やされ、涙します。

   それは、「あなたが大好き!前よりもっと大切だよ」という再確認の言葉なのではな

   いでしょうか。

   本書は、言葉の忘れものをしないように、気づきを与えてくれる作品かもしれませ

   ん。


   
   

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