えほんのいずみ

絵本「メリークリスマスおおかみさん」のあらすじや随想

 この絵本について―こわくてユーモラスで
                 元気がもらえる絵本

著・絵:みやにしたつや

出版社:女子パウロ会

出版社による対象年齢:4歳~

出版年月日:2000年10月1日

定価:1,320円(本体1,200円)

 
 はじめに


   本書はシンプルなストーリィの中に、クリスマスの愛のメッセージが込められていま

   す。幼児さんはユーモアあふれる場面を喜ぶので、クリスマスの読み語りや劇にして

   も盛り上がるでしょう。

   全国学校図書館協議会選定図書

   
 あらすじと随想


   さて、明日はクリスマス。
 
   はらぺこおおかみが森の中を歩いていると、12匹のこぶたのきょうだいがツリーを飾

   りながら、楽しそうにクリスマスの歌を歌っていました。

   その歌にムシャクシャしたおおかみは、ガオーッと彼らを追いかけ、あっという間に

   全部つかまえてしまいました。

   そして“今夜はほんとにすてきなクリスマス。こぶたのごちそうだぞ!”とにんまり。


   

   ところがその時、自分がムチャクチャに壊したこぶたたちのクリスマスツリーにつま

   ずき、大けがをしてしまったのです。

   しかし、心優しいこぶたたちは、おおかみをベッドに寝かせ介抱してあげたのでした。


   

   一方、おおかみは、“治ったらおまえたちをくってやる!”と何度も叫びましたが、

   口に包帯が巻かれているため、 そんな恐ろしいことを叫んでいるとはわからず、周り

   には“うううううううっうー”という唸り声にしか聞こえません。

   そこでこぶたたちは、おおかみがひどい言葉を叫ぶたびに勘違いし、 “「ごめんね」

   と言っているのかもしれないよ”“「ありがとう」と言っているのかなあ” “おおか

   みさん、痛いんだよね。”“だいじょうぶだよ。すぐに良くなるからね”と口々におお

   かみを励ましたのです。


   

   さて、クリスマスの朝。

   おおかみは、ぬくもりをいっぱいもらって、こぶたの家をあとにしました。

   そしてゆっくり歩きながら口の包帯をとり、そっとすてきな言葉を呟いたのです。

   口の包帯を解くことの意味は、心と心のコミュニケーションがとれるようになったこ

   とを意味しているのかもしれません。


   
   
 随想とまとめ


   さて、おおかみの唸り声がこぶたたちに勘違いされる場面は本書のクライマックスで

   すが、きっと幼児さんたちを笑いの渦に巻き込むでしょう。

   本当は凶暴で攻撃的なおおかみの言葉を、こぶたたちが「ごめんね」とか「ありがと

   う」と勘違いし、プラスの言葉だと思い込むのは、無垢で前向きな心を投影するもの

   かもしれません。

   そして、悔し紛れに叫ぶおおかみへのあたたかなプラスの言葉は、くい違いのうえに

   成り立っているとはいえ、おおかみの心を少しずつぬくもりで満たしていくのでしょ

   う。


   

   決定的なのは、クリスマスイブに、こぶたたちが優しい言葉と共におおかみの枕元に

   置いたプレゼントでした。それがおおかみを感涙させます。

   やがてクリスマスの朝、おおかみは、自分がツリーを壊した償いのように、新しい12

   本のきれいなクリスマスツリーをこぶたたちにそっとプレゼントして、帰ったのでし

   た。


   

   こぶたたちが、敵ともいえるおおかみに対して示したどこまでも無私な愛。

   それによってぬくもりを得たおおかみが、心を込めてこぶたたちにお返しのプレゼン

   トをするのは、まさにクリスマスにふさわしい、時に適った出来事だったのかもしれ

   ません。

   是非おとなの皆さんも、クリスマスには、ユーモアと愛に満ちたこの絵本を楽しんで

   ください。


   
   

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