えほんのいずみ

絵本「おばけのてんぷら」のあらすじや随想

 この絵本について―ユーモアあふれるおばけのてんぷら

作・絵:せなけいこ

出版社:ポプラ社

出版年月日:1976年11月

出版社の対象とする読者年齢:3・4・5歳

定価:1,320円 (本体価格 1,200円)

 
 はじめに


   本書は、おばけと主人公との絡みがおもしろい「めがねうさぎ」シリーズの一冊で、

   子どもたちに大人気のロングセラーです。

   子ども時代から楽しんだ読者の皆さんも多いことでしょう。

   おとなも、作者独特のおおらかさに魅かれるに違いありません。
        
   作者せなさんは「いやだいやだの絵本」でサンケイ児童出版文化賞受賞。

   作品には「あーん あーんの絵本」シリーズ(いずれも福音館書店)、「おおきくなり

   たい」シリーズ(偕成社)、『ばけものつかい』(童心社)、「せなけいこのえ・

   ほ・ん」シリーズ、『およげないさかな』(いずれもポプラ社)その他多くの絵本が

   あります。

   
   
 あらすじと随想


   主人公はメガネをかけたうさぎの「うさこ」。

   食べるのが大好きです。

   ある日、こねこくんのお弁当をのぞいたら、おかずは天ぷら!

   味見をさせてもらったところ、おいしさに驚き、うさこは自分で天ぷらを作ることに

   しました。

   早速、野菜を切り、ころもをつけて、熱い油で揚げました。

   “何ていいにおい!”

   がまんできずにうさこは、揚げたての天ぷらを食べながら作ります。


   

   するとおいしい匂いに誘われて、山の小さなおばけがうさこの家へ忍び込んだので

   す。そして、見つからないように、次から次へと天ぷらをつまみ食い!

   でも、うさこはぜんぜん気づきません。


   

   ところが、おばけは油ですべって、うっかりころもの中に落ちてしまいました。

   さあ、たいへん!

   おばけはころもごと揚げられてしまうのでしょうか?

   最後に意外なものも天ぷらにしてしまい、子どもたちの笑いを誘います。


   
   
 随想とまとめ


   この絵本を読むと、まど・みちお作の「てんぷら ぴりぴり」という美味しそうな詩を

   思い出します。


   

   ほら おかあさんが ことしも また

   てんぷら ぴりぴり あげだした


   

   みんなが まってた シソの実の

   てんぷら ぴりぴり あげだした

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


   

   実は、私は二年前の大晦日、年越しそばに添える天ぷらを揚げている最中に火傷を

   し、それ以来、自分で天ぷらを作るのが怖くなってしまいました。


   

   しかし、何といっても、天ぷらは揚げたてが一番!

   でも、この絵本は誕生後44年も経っているのに、今もなお揚げたてのように、ユーモ

   アはじける味わいです。


   

   たとえば、おばけにどんどんつまみ食いされても気づかない主人公。

   そのうえ、おばけを生きのいい野菜と勘違いしたり、その他大事な道具まで揚げてし

   まうそそっかしいうさこです。

   おばけの方も、つまみ食いに夢中になって衣の中に落ち、油で揚げられそうになる慌

   てんぼう!

   それらを失敗としないで、思いきりチャーミングな笑いにする。そこがせなさん独特

   のユーモアですし、読者を楽しませる秘訣なのでしょう。


   

   うさこののんびりとした楽天性は、作者の息子さんの幼い頃がモデルだそうです。

   うさこを“めがねうさぎ”として主人公に設定したのも、彼が小学2年生の時にメガ

   ネをかけなければならなくなり、気持ちが落ち込まないように、メガネは楽しいもの

   だよというお話にしたかったからだということ。

   おばけについては、3歳頃からお子さんに“好きだけどこわい”と言われ、絵本を創

   作する時には、子どもを怖がらせない、楽しいおばけを登場させようと工夫したそう

   です。

   また天ぷらは、お子さんたちが大好きだったので、せなさん自身がよくキッチンで

   作ってはその場で揚げたてを食べさせてあげたということ。その臨場感がそのままこ

   の絵本になったのでしょう。


   

   つまり子どもらしい発想や楽天性が、作者によってさらにアレンジされ、読者にユー

   モアとおおらかさをたっぷりと味わわせてくれるのです。

   絵の方も独特な貼り絵ですので、登場人物の正面の表情が豊かではっきりとわかり、

   年齢を問わず読者に訴えかける力が強いのではないでしょうか。

   このような貼り絵の作品になったのは、絵本作家を志して童画家武井武雄さんに師事

   した時、先輩から貼り絵を教わったからだそうです。


   

   本書は楽しく、図柄も大きいので、小集団での読み聞かせも盛り上がるでしょう。

   おとなの皆さんにとっても、気持ちが明るくなる絵本です。

   ただ小判や大型絵本もありますので、購入する時にはサイズをよく確認されるようお

   勧めします。


   
   

プロフィール

ネッカおばあちゃん

カテゴリー

  ねこ   クリスマス

クリスマス絵本一覧

COPYRIGHT © えほんのいずみ ALL RIGHTS RESERVED.

▲ ページの先頭へ