えほんのいずみ

■ にんじん嫌いをめぐって


 エミリーちゃんの誕生日


   知り合いのアメリカ在住、エミリーちゃんのことです。

   彼女のママは日本人、パパがアメリカ人です。


   エミリーちゃんは今3歳ですが、にんじんが大嫌い。

   なだめても工夫しても食べないので、彼女のママは思いあまって、3歳の誕生日の

   夕食に、「もし今晩にんじんを食べなかったら、バースデーケーキは無しです

   よ!」と厳しく言ったそうです。

   すると、エミリーちゃんは好きなものだけ食べてにんじんを残し、泣きもせずに、

   さっさと寝室に行って寝てしまいました。

   ママは、「ここまで彼女が頑固だとは思わなかった!」とびっくりしました。


   するとその夜、エミリーちゃんの2歳年上のお姉さん、アリスちゃんが、「誕生日

   にバースデーケーキも食べられないなんて、エミリーがかわいそう!」と泣いたそ

   うです。妹おもいのアリスちゃんです。

   彼女も妹のバースデーをお祝いして、一緒にケーキを食べるのを楽しみにしていた

   のでしょう。


 絵本『おおきなおおきなにんじん』との出会い


   エミリーちゃんのお誕生日のエピソードを聞いて、私は『おおきなおおきなにんじ

   ん』(刀根里衣 小学館刊)という夢のあるあたたかな絵本の英語版を彼女に送り

   ました。にんじん嫌いが解消されなくても、何か親子で楽しい時間が持てると良い

   と思ったのです。


   さて、絵本はどんなふうにエミリーちゃんに働きかけてくれたでしょうか。


   彼女は、ママに、この何とも愛らしいうさぎの絵本を読んでもらって、六人きょう

   だいのうち、一番小さいうさぎが大好きになったようです。

   そして、ごはんの度に必ず絵本を持ってきて、自分のお皿のにんじんを「チビウサ

   ちゃんにはわたしのにんじんもあげる。きっともっと大きくなれるわよ!」と、絵

   本の小さいうさぎににんじんを食べさせるまねをしました。そのあと、自分も食べ

   るまねをしているそうです。


   その様子を見て、ママは、「エミリーが、今まで見向きもしなかったにんじんに目

   を止めて、最近は絵本の小さなうさぎに食べさせたり、自分も食べるまねをしたり

   するようになった分だけ、成長したのかもしれない」と、喜びました。


   エミリーちゃんは、にんじんには栄養があって体に良いこともちゃんとわかってい

   るのです。でも、やはり好みではないので、実際には食べず、うさぎと一緒に「気

   持ち」で食べるのでしょう。


 食べ物の好みを見守る視点


   食べ物の好みは、人それぞれです。

   特に子どもの場合、食材となじみが薄いため、自分の味覚や嗅覚、食感に合わない

   と、食べにくいようです。

   でも、成長と共に、友だちを見て自分も食べられるようになったり、好みが変わっ

   たりすることもあるでしょう。

   何か食べられないものがあっても、他の食材で栄養素が代替えできる場合も多くあ

   ります。


   ただ、調理する人は、子どものためにせっかく作ったものを決まって残されると、

   何か自分が拒絶されているように思えることがあるのかもしれません。でも、子ど

   もは、ママのことが嫌いで、残すわけではないのですから、長い目で見てあげる必

   要があるのでしょう。 


   この『おおきなおおきなにんじん』のように教訓臭がなく、幼い読者の想像力を楽

   しく育んでくれる絵本は、大人にとっても、柔軟に子どもを見守るゆとりを与えて

   くれる気がします。


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