えほんのいずみ

絵本「およげないさかな」のあらすじや随想

 この絵本について―勇気がもらえるあったかい絵本

作・絵:せな けいこ

出版社:ポプラ社

     出版社の対象とする読者年齢:3歳・4歳・5歳
              
発売日:2015年 7月 8日

定価:1430円(本体1300円)

 
 はじめに


   作者せなけいこさんは、あたたかさとユーモアあふれるすばらしい貼り絵の絵本作家で

   す。

   子どもからおとなまで年齢を問わずに、人気のあるロングセラー絵本が数多く出版され

   ています。『いやだいやだのえほん』でサンケイ児童出版文化賞を受賞。

   本書は、せなさんならではの本領を発揮し、多くの読者の皆さんに大きな励ましを与え

   るのではないでしょうか。

   
 あらすじと随想


   主人公は表紙絵のような泳げない赤い魚。

   全場面に用いられている色は、主人公の赤、海や背景を表す白、そして海草やさま

   ざまなモノを表す草色のドット模様。その三種だけです。

   しかも全場面の文章が口語調なので、読者は親しみを込めて話しかけられているよ
   
   うに、主人公の気持ちにグッと引きこまれるのではないでしょうか。
   
   例えば、最初の場面の文章は“海の底で魚の子どもたち たくさん生まれたけど
   
   あれっ このこは およげないって”。
   
   次の場面では、赤い魚が海の底を腹ばいで移動し、やっと浜辺にたどり着くと、ひ
   
   とりの少年に“どうしたの?”と声をかけられます。“ぼく、泳げないんだ”と涙な
   
   がらに魚が答えると、”ぼくもだ”という意外な答えが返ってきました。

   この絵本には、「えーっ、魚なのに泳げないの?」と馬鹿にするような登場人物はひ

   とりもいません。

   それどころか、周りの魚たちは「がんばってね」と言い、大勢の子どもたちも“泳げ

   ないならスイミングスクールへ行けば、泳げるようになるよ”と教えてくれたので

   す。

   そこで浜辺で出会った男の子と一緒に、スイミングスクールへ行くことになりまし


   た。赤い魚もスクールの子どもたちと同じように水泳帽と水着をつけ、飛びこみ台に
      
   並ぶ姿がとても可愛くてユーモラスです。さらに「大丈夫。泳げるようになるよ」と
   
   励まされ、泳ぎの練習を重ねたのです。

   

   ところがある日、プールサイドにいた子猫が興味津々でプールをのぞき込み、水の中

   に落ちてしまいました。

   そこで、赤い魚は思わず子猫のもとへ泳いで行き、その子を助け上げたのです。

   その後のうれしいフィナーレは是非絵本でご覧ください。
   
 随想とまとめ


   この絵本からは不思議な勇気がもらえます。

   「できないこと」を馬鹿にされたり責められるのではなく、練習すればできるように

   なるよ、と励まされます。魚が「泳げないんだ」と涙を見せた時、少年も「ぼくも

   だ」と心を開くので、主人公はほっとするし、共感し合える友だちができて互いに嬉

   しく思えるでしょう。

   さらにスイミングスクールという場所が具体的に示されることによって好奇心と希望

   が湧いてきます。

   魚がスイミングスクールへ行く場面に笑ってしまう子どもたちもいるようですが、

   魚だって泳げなかったらスイミングスクールへ行けば良いんだよ、という前向きな発

   想がもらえるでしょう。

   魚も泳ぎを習い、子猫を助けるために思わぬ力が発揮できて、泳げる自信がつきま

   した。

   誰かの役に立つことは、子どもにとっても大きな喜びや励みになりますね。

   

   ところで、私は、二年前にブログ「えほんのいずみ」を息子に勧められて始めまし

   た。

   しかし、正直なところ、文章は書けてもプログラミングの技術がありませんので、恥

   ずかしながら、今までブログとしてアップする作業は、全部息子にやってもらってき

   ました。

   しかし、彼にも多忙な時や都合がありますので、いつまでも頼る訳にいきません。

   そこで最近、思いきって息子に更新の仕方を習い、自分でコーディングにチャレンジす

   ることにしました。

   「慣れればできるようになるから、まずは練習してみたら」とアドバイスをもらい、
   
   この絵本の泳げなかった魚と同様に、現在奮闘中です(笑い)。
   
   

   さて、話を絵本に戻しますと、本書は登場人物のやさしい気持ちやあたたかい言葉

   が、限られた場面の短い文章、三種類の色彩の絵で実にこまやかに描写されています

   ので、絵本という媒体の限りない魅力と作者の表現力に改めて感動する方が多いので

   はないでしょうか。


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