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絵本「まじょのかんづめ」のあらすじや随想

 この絵本について―赤ちゃんからおとなまで楽しめる
          不思議な世界
  
作:佐々木マキ
 
出版社:福音館書店

出版社の対象とする読者年齢:読んでもらうなら4歳~
       自分で読むなら:小学低学年~
              
発売日:1999年4 月
    
定価:990円(本体900円)

          
 はじめに


   本書は、絵が文章と同じくらい多くを語り、読者の皆さんの年齢を超えて楽しませて

   くれる絵本でしょう。

   作者佐々木マキ氏は漫画家、イラストレーターとしても大活躍の人気絵本作家。

   デビュー作『やっぱりおおかみ』(福音館書店)で、子どもたちの感性を魅了

   し、圧倒的な支持を得ました。氏の自伝『佐々木マキーアナーキーなナンセンス詩

   人』(佐々木マキ著、河出書房新社)も佐々木ワールドの魅力と謎解きでいっぱいで

   す。

   
 あらすじと随想


   ある日、大きな目の女の子と目の大きな犬が森へ遊びに行くと、壁が黄色で屋根が紫

   色の見慣れない家がありました。ドアに鍵がかかっていなかったので中へ入ってみる

   と、「叫び」というタイトルのおかしな彫刻とバーゲンセールの葉書もありました。

   よその家に勝手に入るのは良くないと、二人が相談して外へ出ようとした時、トンネ
   
   ルの中から叫ぶような“助けてくれえ”という、とても小さな声が聞こえてきたので
   
   す。
     
   その声は、台所のテーブルの缶詰の中から響いているようでした。
   
   誰かが缶の中から叫んでいるのかもしれません。
   
   あわてて女の子が缶切りで缶を開けると、中から動物たちが飛び出してきました。

   ひとつ目の缶からは象が。ふたつ目の缶からは熊が。そして三つ目の缶からは豚が3

   匹も!

   実は、この家は魔女の家で、動物たちはみんな魔女に缶詰にされていたのです。

   その時、現われた魔女は、勝手に自分のだいじな缶詰を開けた女の子と犬をも、呪文

   で缶詰にしてしまいました。

   
  
   万事休すと思った時、窓からモクモクと白い煙が入ってきました。

   ところがその煙に隠れて、魔女のだいじなほうきが誰かに盗られてしまったのです。

   それは、動物たちのたき火大作戦でした。

   缶詰にされたふたりの魔法を解かないと、ほうきは返さないぞと言う条件を動物た

   ちが魔女に突きつけたのです。

   さて、魔女はどうする?

   「叫び」の彫刻が誰なのかも気になるところです。

   ハラハラドキドキでコミカルなフィナーレは是非絵本で楽しんでください。

  
   

 随想とまとめ


   この絵本はタイトルから連想すると、魔女を缶詰にするストーリィかと思いますが、

   そうではありません。

   本書の魔女は恐ろしくはないけれど、ちょっぴり怖くてコミカル。

   ですからこの絵本を音読する時には、ちょっと怖い雰囲気で魔女語を読んでも大丈夫

   でしょう。

   恐ろしい魔女の場合は、魔女語を怖~く読むと、泣きだすお子さんもいますが・・。

   ところで本書の魔女が怖いのは、動物や人を缶に閉じ込めたりモニュメントに変えた

   りして、自由を奪うところです。
   
   ところが、缶から解放された動物たちが交換条件に出したのは、ほうきを取り上げ、

   魔女の移動や飛翔の自由を奪うこと。ですから、魔女の自由が保障されるためには、

   缶の中の女の子と犬を解放するしかありません。

   この魔女の呪文ときたら傑作なので、子どもたちがよくマネします。

   魔法をかける呪文は「アカンカ・サカンカ・タクラマカン、かんづめになれえ」。

   魔法を解く時の呪文はもっと愉快です。



   ところで先日、偶然この絵本をカバンに入れて電車に乗ったら、おもしろい出来事が
   
   ありました。
   
   電車の席の隣でパパに抱かれた1歳半の赤ちゃんがむずかっていたのです。
   
   かわいい坊やでした。思わず私は「いないいないばあ」をしたり、ちょっと手遊びを
   
   してあやしました。
   
   それから、かばんに入れてあったこの絵本の表紙をパッと見せたら、そのお子さんの

   顔が輝いたのです。そこで、絵本のページを繰りながらお話ししていったところ、缶

   詰から次々に動物が飛び出す場面で、にこっと笑顔になりました。そして最後まで絵

   本への赤ちゃんの集中力は途切れず。 

   そのうえ、赤ちゃんが降りる駅になってさよならをする時、彼はパパに抱っこされた

   まま、小さな人差し指を「ET」の映画のように差し出して、私の人差し指にタッチし

   てくれました。

   『まじょのかんづめ』を、意外なことに1歳の乳児さんと一緒に楽しめるなんてホン

   トにラッキー!!赤ちゃんの笑顔に癒やされ、久しぶりに心が弾みました。
  
   やはり乗り物に乗るときは、絵本を持って出かけるに限るなぁと思った次第です。


 

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