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絵本「くつやのまるちん」のあらすじや随想

この絵本について―愛のあるところに神あり
                                                                            
     
原作:トルストイ
  
       
絵:かすや昌宏

文:渡 洋子

出版社:至光社
                
発売日:1981 年
    
定価:1430円(本体1300 円)

          
 はじめに


   本書のストーリーはフランス人作家ルーベン・サイアンの原案によります。さらにそ
   
   れをロシアの文豪トルストイが「愛のあるところに神あり」(『人はなんで生きる
 
   か』(岩波文庫所収)と題して深め、この『くつやのまるちん』の原作となりました。

   今回はこの絵本を通して、クリスマスに降誕された、神の御子イエス・キリストの

   愛を学んでいけたらと思います。 
     
   

 あらすじと随想


   ある町に「まるちん」という名の靴屋が住んでいました。彼の住む地下室のたった一

   つの窓からは、往来を行き過ぎる人の足が見えました。でも人々の靴を見るだけ

   で、それがだれなのかを見分けることができました。どれもまるちんが精魂こめて
      
   作り、修理した靴ばかりだったからです。
         
   まるちんは毎日一生懸命靴づくりに励みました。しかし、妻子が次々に亡くなり、ひ
        
   とりぼっちだったので、本当は悲しみでいっぱいだったのです。

   そんなある日、まるちんは聖書を読みました。そこに書いてある神さまのことばに安

   らぎを覚え、毎日夢中になって読んだのです。すると、彼は夢の中でキリストの声を

   聞きました。「まるちん あした いくから まっておいで」とイエスさまが言われ

   たので、いつ来られるのかと、胸がドキドキしました。

   
     
   まるちんは、その日、雪かきをしている年とったおじいさんに気づいたので「すこし
      
   あったまって いきませんか」と声をかけました。疲れたおじいさんは、まるちんの部
   
   屋で温まり、元気になって帰っていきました。
    
   それから、寒い外で泣き止まない赤ちゃんをあやしているお母さんを助けました。
 
   その人は貧しくて空腹なうえ、冬なのに夏服を着て凍えそうだったのです。
                               
   そこでまるちんは、温かい部屋でパンとスープをごちそうし、自分の上着もあげまし
              
   た。お母さんも赤ちゃんも、まるちんの優しさに温もりました。

   その後、窓の外で、言い争いの声が聞こえました。少年がおばあさんのりんごを盗ろ

   うとしたので、おばあさんはひどく怒っていたのです。まるちんはおばあさんに、彼

   を許すように勧め、少年には、おばあさんに謝るように勧めました。やがて二人は歩

   み寄り、お互いに気持ちを通わせて帰っていきました。

   その晩、まるちんが聖書を読んでいると、キリストの声がしました。「まるちん わた

   しがわからなかったのか あれは みんな わたしだったのだ」と。雪かきのおじい

   さんも、赤ちゃんのいる貧しい母親も、争っていたおばあさんと男の子もイエスさま

   だったのです。キリストは「まずしいひと ちからのないひと びょうきのひとや 

   いえのないひとの なかに わたしはいます」と聖書を通して言われます。

   

 随想とまとめ


   この絵本の原作『愛のあるところに神あり』では、貧しいお母さんの場面、おばあさ

   んと男の子の場面で、まるちんが代わりに重荷を負います。
 
   貧しい母親が、売ってしまった上着を買い戻すために、まるちんはその代金を上げま
                                                    
   した。またりんごを盗もうとした男の子の代わりにおばあさんに代金を払い、少年に

   りんごを与えたのです。つまり、まるちんが少年の罪を贖ったからこそ、おばあさん

   は少年を許したのですし、少年も自分の代わりにまるちんが罪を贖ってくれたからこ 
        
   そ、おばあさんに謝罪するゆとりができました。イエスさまに代わるまるちんの贖罪
   
   は、大きな意味を持つものでしょう。
 
   
 
   私たちの心の内でも、自分を許して下さる大いなる存在を知らずに、自分を責め続
  
   け、他者に抵抗してしまう場合があります。 

   しかし、どんな時も、弱さのただ中に来てくださるのがイエス・キリストです。キリス

   トはまるちんの本当の寂しさをよくご存じだからこそ、彼のもとへ来てくださったの

   でしょう。

   しかし、人々を豊かに祝福する大いなる姿で来られたのではなく、逆にまるちんの愛

   を必要とするような、弱く小さな者の姿で来られました。孤独から解放されるために

    は、他者からの愛を待つよりも、小さな存在に愛を差し出す方が、人々と温もりのあ

   るつながりを生むことができるのでしょう。聖書にも「受けるより与える方が幸いで

   ある」(使徒行伝20章35節)とあります。

   

   神の御子イエス・キリストは、クリスマスに赤ちゃんとして降誕なさいました。神と

   しての威厳をたたえた老賢者ではなく、限りなく小さく弱い存在として。

   しかし、実は私たちの心に希望を与え、誰よりへりくだった大きな存在の方だとい 

   えるでしょう。どんな時もまず私たちを、小さな存在として、限りなく愛してくださっ

   ていることを覚えておけたらと思います。

   

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