えほんのいずみ

絵本「おひさまパン」のあらすじや随想

この絵本について―心あたたまるおいしいパンの絵本
                                                                            
  
作・絵:エリサ・クレヴェン

翻訳:江國香織

出版社:金の星社

発売日:2003年 7月

定価:1,430円(本体1300円)

                                     
 はじめに


   作者・エリサ・クレヴェンさんの絵は貼り絵の部分もあるようですが、カラフルで繊 
   
   細で躍動的です。 
 
   ですから、幼い子も飽きずに絵を見て、繰り返し読みたがります。子どもたちの内

   にあるアニミズムを豊かに楽しませてくれるのでしょう。

   もちろん大人の読者の皆さんも、笑顔のおひさまパンを見ただけで、幸せな気持ちに 

   なれると思いますし、寒い日もこの絵本を読むと心がホカホカしてくるでしょう。
     
   

 あらすじと随想


   さて、雪まじりの風が吹く凍えそうな日、おひさまは空のどこかに隠れています。

   街中の動物たちは皆、何だか気持ちが沈んで、おひさまの金色の笑顔が輝くのを内心

   じっと待っていました。
      
   すると犬のパン屋さんが「それじゃあ、うちでおひさま味の特別パンを焼きましょ
         
   う」と、張り切ってパン生地をこね始めたのです。
        
   やがて、笑顔の大きなおひさまパンはふくらみ、焼き上がって街中においしい匂い

   が、漂いました。

   すると「パン屋さんがおひさまをつくっちゃった!」と、街のみんなが叫びました。

   パン屋さんは、みんなを店に招き入れ、できたてのほかほかパンをごちそうしまし

   た。

   そのフクフクとおいしいこと!
     
   食べるとウキウキとして、何だか踊り出してしまいました。
      
   そして空まで登って、飛んだりはねたり。
   
   すると、ほんもののおひさまが目をさまし、雲の隙間からみんなを照らしたのです。
    
   「パンを少しいかが?」
 
   パン屋さんの言葉に、皆はパンを小さくちぎっておひさまに投げ上げ、食べさせてあ
                               
   げました。
              
   おひさまは全部たいらげると、暖かな光で全世界を照らして、春のように明るい陽ざ

   しをふり注いだのです。

   雪も解け、色鮮やかな季節がよみがえりました。

   子どもたちは遊び、小鳥は歌います。

   何とうれしいことでしょう。

   パン屋さんは、待ちに待ったおひさまのために、その夜、おひさまが翌朝に食べる、

   大きな大きなおひさまパンを焼きました。

   それ以来、曇った日、寒くて凍てつく日には、おひさまに上げるために、だれかが必

   ずパンを焼くようになったのです。星型パン、鳥型パン、お花パンに、うさぎパン、

   すてきにおいしそうなパンばかりです。さあ、だれがそのパンを焼いてくれているので

   しょうか、是非本書を開いて、パンの香りと共に楽しんでください。

   

 随想とまとめ


   さて、最初の場面は、おひさまが空から消えてしまったような寒さに凍えそうな絵。

   どの家も、子どもが病気をしたり、けんかをしたり、動物の家族が怒ったり泣いた
 
   りの、不穏な様子が描かれています。読者の子どもたちは、絵で物語を読み取ります
                                                    
   ので、2歳くらいでも、丁寧に寒々とした最初の不安な場面をゆっくり見ていきま

   す。

   ところが、おひさまを恋しがったパン屋さんがパン生地をこね、おひさまパンができ
        
   あがっていくと、「どうなるのだろう?」とうれしそうに興味津々!場面から湧き出
   
   るようなたくさんの動物たちの登場が楽しめるのです。

   みんながパンを食べる、心はずむ場面では、もちろん読者の子どもたちも、食べる真

   似をしたり、一緒に食べているつもりになって盛り上がります。

   
 
   おひさまが隠れた寒い日に、おひさまパンをつくり、みんなで分け合って食べたり、
  
   食べるだけでなく、目をさましたおひさまにもパンをあげようとする、犬のパン屋さ 

   んの心あたたまる思いやりがすてきです。

   寒い日でも、食べれば元気が出ますし、おいしいパンが自分たちの手の中から生まれ

   るという体験ができるのも、この絵本に刺激を受けてのことでしょう。

   裏表紙でおひさまパンの作り方が見られるのも、魅力的!

   私も孫息子と一緒に冬休みに作ってみたいと思います。

   おひさまの偉大な力、すばらしい天の恵みにも、気づける絵本ではないでしょうか。

   

 お知らせ 
 
       
   「えほんのいずみ」を御高覧下さって、ありがとうございます。


   諸事情により、来年度の初回更新は、3月までお待ちいただけたらと思いますが、


   どうぞ宜しくお願いいたします。


   

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