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絵本「みならいうさぎのイースターエッグ」のあらすじや随想

この絵本について―成長を「見守る」ことの大切さが読め
          る、美しい絵本
                                                                            
  
作・絵:エイドリアン・アダムス 

翻訳:三原 泉

出版社:徳間書店

出版社が対象とする読者年齢:5歳~ 

発売日:2020 年 2月 13日

定価:1870円(本体1700円)

                                     
 はじめに


   本書は1976年の初版から長い間アメリカで人気を博してきたという、
   
   イースターにまつわる絵本です。
 
   イースターはキリスト教に由来し、「復活祭」といわれる春の祝祭行事です。

   たまごにきれいな絵を描き、そのイースターエッグを飾ったり贈ったりする習慣

   もあるようです。子どもたちも、庭などに隠されたたまごを楽しんで探すので

   す。
    
   イースターエッグは、うさぎが運んでくるといわれてきました。この絵本では、

   うさぎの世界がしなやかに生き生きと描かれ、作者エイドリアン・アダムス

   さんの繊細で美しい画風と色彩に魅了されるでしょう。

   

   

 あらすじと随想


   本書は、うさぎのアボットさん一家のお話です。主人公はむすこのオーソン少年。両

   親が画家であり、イースターエッグに絵を描く仕事をしているので、オーソンもたま

   ごに絵付けをする仕事をしたいと望んでいました。ところが、彼はまだまだ遊びたい
      
   さかり。絵付けの手伝いにすぐ飽きて、遊びに夢中になってしまうくせがなかなか抜
         
   けませんでした。
        
   

   さて、秋も10月のある日、来年のイースターに向けて仕事を開始する前に、一家は家

   族旅行の計画を立てました。その時、自家用車の錆びなどを塗り替える必要があるこ

   とに気づいたのです。

   すると、オーソンが張り切って、自分も手伝うと言い出しました。そして、イース

   ターエッグさながら車を塗り替え、車体に絵を描き始めたのです。
     
   完成した車で、一家が旅行に出かけると、オーソンが絵を付けた自家用車や荷車の模
      
   様は人々の注目を集め、旅のあちこちで、絵を描いてほしいという注文がきました。
   
   例えば、ある家の外壁全体に、あるいは飛行機の全面に、また橋に絵を描く仕事な
 
   ど。

   オーソンはわくわくしながら身軽にどんな場所にも絵を付けていきます。
   
   すると多くの人が彼の描く楽しい絵を見に来ました。オーソンはやりがいのある絵付
 
   けの仕事に夢中になりましたが、はたしてたまごの絵付けは彼の興味を引くでしょう

   か。
   
   
 
   ところが雪の降る1月、一家が旅行を終えて自宅に戻ると、オーソンはすでに届いてい

   た1000個のたまごにゆかいな絵を次々に描き始めたのです。ユニークな絵を付ける
   
   オーソンのイースターエッグは飛ぶように売れ、いつのまにか両親の方が彼の仕事の
 
   手伝いをするほどになっていきました。

   さて、イースターの前の晩、例年のようにアボットさん一家は庭に、近所の子どもた
   
   ちが探すイースターエッグを隠しました。子どもたちを喜ばせられるかどうかが、オー

   ソンの何よりの楽しみだったのです。そして次の朝、早起きした彼は木の上から、
 
   子うさぎたちのたまご探しの様子をにこにこしながら眺めました。
   
   その次にオーソンが絵を付けたのは、どんな仕事だったのでしょうか。
  
   是非、絵本を楽しみにご覧ください。
 
   
                                          

 随想とまとめ
          

    親の稼業を継ぎ、やがてそれを自分の仕事にする子どももいれば、見向きもしない子

    もいるでしょう。この絵本では、うさぎのオーソン少年がイースターエッグに絵付け
 
    をし、アーティストとして成長していく姿と、それを見守る両親の心の動きが描かれ
                                                    
   ているように思います。彼の場合、親が画家でしたから、いっそうオーソンの成長に

   対する期待もあり、集中力のない息子がいつになったら一人前になるのだろうか、と

   いう不安もあったのかもしれません。

   しかし、オーソンの絵は思いがけないところで評価されることになります。自動車や
 
    荷車に絵を描いたダイナミックな模様が人々を魅了し、家や飛行機、橋などに絵を付
                                                                                                                
   ける仕事を依頼されたのです。つまり意外にも外部の人々に絵が気に入られ、評価さ
 
   れるという経緯が、やがてオーソンならではのゆかいでユニークなイースターエッグ
 
   の絵を生み出しました。そして両親の絵を凌駕するほどになっていったのです。

   フィナーレの前の場面で、イースターエッグを探す子うさぎたちに温かなまなざしを

   注ぐオーソン!わずか半年間の彼のめざましい成長ぶりに驚くばかりです。

   せかさずに「見守る」という忍耐と楽しみが、親や周囲にあってこそ、その子なりの成

   長ができ、賜物も花ひらくのだと、励まされるような気がします。
   
   イースターというイエス・キリストの御復活に込められた、死を超える忍耐と御愛

   にも、思いを馳せずにはいられません。
   
   

   
   

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