作者の谷口智則さんは、海外でも活躍している絵本作家さんです。
この絵本は、大人気の『100にんのサンタクロース』の礎を築き、大きいサンタもち
いさいサンタも色鮮やかで魅力いっぱいです。
表紙の見返しにサンタのサイズが具体的に書かれているので、小学生にも説得力が
あります。
クリスマス会などでの読み語りにも使える、ほのぼのとした絵本でしょう。
さて、ある丘に、大きいサンタクロースと小さいサンタクロースが住んでいました。
ふたりは隣どうしでしたが、家と家との間に、ずっと昔から「おおきいまち」と
「ちいさいまち」を分ける境界の柵があったので、話をしたこともありませんで
した。
ある年のクリスマスのこと、ふたりがやっとプレゼントを配り終えて、それぞれの
家に帰ると、思いがけない手紙が届いていました。
小さいサンタの家には、大きなゾウのパオくんから、そして大きいサンタの家には、
小さなネズミのチュータくんからでした。どちらもプレゼントのリクエストでした
が、ふたりのサンタはそれぞれ、リクエストに応えられそうにもないので、困って
しまいました。
そして悩んだあげく外に出ると、偶然に柵のところで、隣のサンタと出会い初めて
話をしたのです。
その結果、ふたりはすばらしい解決策を思いつき、プレゼントをちゃんと用意する
ことができました。そして一緒にそりに乗って、朝までにそっと届けられたのです。
それからというもの、ふたりは友だちになり、さらにすてきなことが起こったみた
いですよ。
この絵本から、人と人とが仲良くなるきっかけというのは、いつもプラスの条件の
もとにあるとは限らないことに、勇気をもらえる気がします。
私も引っ越してまもなくの頃、隣どうしなのにゴミ収集所が違う地域で、収集場所
を間違えてしまい、お隣さんに叱られたことがありました。しかし、私が知らなかっ
たことがわかると、その地域のことを丁寧に教えてくれ、友だちとしてのおつき合
いが始まりました。
目に見えない境界線はつらいですが、不安や悩みが垣根を超えて、だれかと友だち
になるきっかけをつくってくれることがあるのかもしれません。
本作では、絵の方も、大きいサンタと小さいサンタの背の高さ、足の大きさがユー
モラスに表現されているので、幼児さんにとっても、きっと大小の違いやその良さ
を理解するチャンスになるのではないでしょうか。