主人公はまあちゃんという、4~6歳くらいの女の子です。
ある日、先生が皆に、みどりいろの種を5粒ずつ配ってくれました。
するとまあちゃんは、5粒の種だけでなく、その時、口の中でなめていた緑色のあめ
玉も一緒に畑に埋めたのです。
さあ、土の下でいったい何が起こるのでしょうか。
他の子のまいた緑のえんどう豆たちは、ジョロで水をもらってニコニコしています。
でも、ものぐさなまあちゃんは、種に水をやらないので、まあちゃんのまいた種たち
は乾いた土の中で、ブツブツ文句ばかりでした。
しかし、あめ玉だけは、水がもらえなくても全然平気!
すると、他の5粒の種たちは、あめ玉のことを「あいつ、根も芽も出てないのに、す
ましてる」とうわさしました。
そして「へーんなやつ!」と、声をそろえてからかったのです。でも、あめ玉も負け
てはいません。「へんちょこりんの帽子かぶってへんちょこりんのしっぽはやして、
君らは何者だい?」とえんどう豆の種たちにいいました。「ぼくらは、みんな、えん
どう豆だよ。君こそ、何者だい?!」
「ぼくは、とびきりうまいメロンあめさ!」
お互いに相手を知らないので、にらみ合い、えんどう豆たちは「けっ、つまんないや
つ!」と、あめ玉をけなしました。
すると、あめ玉が「つまるやつか、つまらんやつか、一度ぼくをなめてみるが い
い!」と答えたものですから、種たちは、「苦かったらどうしよう・・」「しびれた
らどうしよう」と迷いました。
でも、のどもカラカラ、おなかもすいていたので、恐るおそるあめ玉をなめてみた
のです。すると何とおいしいことでしょう!5つの豆が順番になめて「最高!と
びきりうまいメロンあめさま!」とほめそやしました。やがて、あめ玉は皆になめら
れ、姿形がなくなってしまったのです。
でも、まあちゃんの畑にはえんどう豆たちが芽を出し、すくすくと育っていきまし
た。
さて、実がなり、収穫の日がきました。まあちゃんの畑からとれたさや豆たちは、
どんな味がしたのでしょうか。
まあちゃんと友だちが味わってみたところ・・。 意外や意外!
あめ玉がえんどう豆たちの味を決めたという微笑ましいストーリィです。
面倒くさがりやの主人公が、えんどう豆たちに水を上げなかったので、種たちは水分
が足りなくてカラカラ!でも、あめ玉だけは水がなくても元気いっぱい!
するとえんどう豆たちが腹を立て、双方の口喧嘩が始まります。このおもしろい口喧
嘩に、読者の子どもたちの笑いは止まりません。
結局、あめ玉はえんどう豆たちになめられ、存在そのものがなくなってしまいまし
たが、アメは、マメの中においしい味として生き残ったのです。
その希望あふれるストーリィ展開のおもしろさ!
話は変わりますが、植物と子どものかかわりは不思議におもしろいです。
我が子が小学生の頃、学校でベゴニアを育て、花が咲き葉も落ちてしまった植木鉢を
家に持ち帰りました。姉娘も弟息子も自分の鉢をベランダに並べて置き、越冬させた
のです。
娘の方は時々鉢を見ては、土の上のゴミを払いきれいにしていました。でも、息子の
方は、鉢の上にどこからか葉っぱが飛んでこようが、ゴミが溜まろうが放ったらかし
ておいたのです。
ところが春が来て、新芽が出たのは息子の鉢の方でした。
土の上に溜まったゴミや飛んできた葉っぱが、新芽を守ったようです。
でも、いつもゴミを払って土をきれいな状態にしておいた娘の鉢に、芽は出ません
でした。吹きっさらしのベランダで越冬するのは、ちょっと厳しい環境だったのかも
しれません。
土の下で何が起きているかは、外から見えないものだと痛感した出来事でした。
ですから、土の下の緑色のマメとアメの織り成すこの絵本は、何度読んでも奇想
天外なおもしろさ!ワクワクと楽しくませてもらえます。