えほんのいずみ

絵本「くまの子ウーフのたからもの」のあらすじや随想

 この絵本について―たからものとは何か?

神沢利子・作

広瀬 弦・絵

主な対象年齢:3歳・4歳・5歳~ 

出版社:ポプラ社

出版年月日:2022年 10 月

価格1540円(本体1400円)


   
 はじめに


   多くの方がご存じのくまの子ウーフ!絵本や幼年童話、教科書などで、親子2代、3 

   代に渡って親しんでこられたことでしょう。

   本作はウーフの原点ともいえます。 

   1968年に雑誌「主婦の友」に収録され、未刊行だった「ウーのたからもの」が半世紀 

   後に見つけだされました。そしてこの新しい絵本「くまの子ウーフのたからもの」とし

   て出版されたのです。

   まるで作者神沢利子さんへの99歳のお誕生日の贈りものであり、読者の皆さんへのプ

   レゼントでもあるとご自身が語っています。

   今回の新しいウーフは画家広瀬弦さんによる、おっとりとおおらかな雰囲気の主人公

   です。


 あらすじと随想


   くまの子ウーフは秋の山でどんぐりを拾いました。

   ズボンのポケットにちゃんとしまったのに、気がつくと、どんぐりは山道をころがっ

   て、下で待ち受けていたねずみの袋の中に入ってしまいました。ポケットに穴があいて

   いたのです。「あ、それ、ぼくの拾ったどんぐり!」と主張するウーフをさえぎり、

   ねずみは「くまのだんな、りっぱなどんぐり、ありがとさんでございます。わしのと

   ころにも家族が増えましてな。いや、ごめんなすって」と袋をかついでどこかへ行っ

   てしまいました。ウーフは“でも、いいや。他にいいものを見つけるさ”と、思いま

   した。

   

   次にウーフは野原で赤くてすてきなボタンを拾い、たからものとして、かしの木のう

   ろに隠しました。

   すると、上着のボタンを探しているうさぎのミミに会います。

   ウーフはミミのボタンが自分のたからものになっているとは気づかず、木のうろに

   案内しましたが、あったのは、どんぐりだけ。

   ウーフが嘆くと、きいきい声で叫んだのは、昨日のねずみでした。

   「けしからん。勝手にひとのお倉のどんぐりをとらないでほしいもんですな」といっ

   たのです。そこで、ウーフも負けずに言い返しました。

   そこへやって来たのが、6ぴきのねずみの子。乳母車をとうちゃんねずみが直し

   てくれたから、また動くようになったというのです。青い車が3つ。赤い車は

   ひとつ。その赤い車こそがウーフのたからものであり、ミミの探していたボタン

   でした。

   とうちゃんねずみはそれを知って、ウーフたちの足もとにどんぐりの袋を置き、子ね

   ずみたちを乳母車に乗せて、お昼ごはんに帰っていきました。

   ウーフとミミのほっとする結末は、是非、絵本でお楽しみください。

   
   
 随想とまとめ


   この作品が面白いのは、発言力が、動物の体の大きさに反比例しているところでしょ

   う。 

   一番体の小さいねずみが、ウーフを「だんな」と呼びつつ、くまの子のどんぐりを全部 

   自分のものにして、「ありがとさん」ともらっていったのです。

   そのうえ、せっかく見つけたウーフのたからものの赤いボタンまで、ねずみの乳母車 

   の部品になっていました。 

   しかし、ウーフもミミも、小さなねずみの子どもたちを最優先にしたのです。 

   とうちゃんねずみは、お礼の気持ちでどんぐりを提供しますが、そのようなお互いの

   譲り合いが読者にぬくもりを与えてくれます。ウーフも我慢して耐えるのではなく、
   
   きちんと言い返すので、読者にフラストレーションは残りません。  

   うさぎもウーフの家で一日中遊べたのは楽しかったことでしょう。

   たからものというのは物質だけではなく、楽しく過ごした時間もたからものになるに 

   ちがいありません 

   

   私も最近たからものを見つけました。 

   実家が売却されることになり、もしかしたらタンス預金でも見つかるかもしれな  

   いと下世話な気持ちで、亡き祖母のタンスを調べたのです。 

   するとタンスの引き出しの隅っこにあったのは、お金ではなく、私の幼稚園時代の小 

   さな園バッジでした。一歳半で生母が亡くなってから、片時も祖母から離れたことの 

   なかった私が、大泣きして祖母分離を果たした幼稚園時代。祖母が私をせかさずに 

   ずっと見守っていてくれた思い出のバッジです。65年も前に私が付けていた園バッジ 
 
   を捨てずにタンスの奥にしまっておいてくれた、祖母の愛情にただ感謝しました。 

   実家が取り壊される寸前に、亡き祖母の思いに新たに気づけたところに、神さまの 

   御愛も実感しました。 

   時に適って、モノに込められた人の思いが読み解かれるとき、それが「たからもの」 
      
   になるのだと改めて感じるこの頃です。 
 
   
   
      
   
   
    桜台幼稚園時代のバッジ  
 
  

  

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