えほんのいずみ

絵本「ねんにいちどのおきゃくさま」のあらすじや随想

 この絵本について―再会の喜び―

作・絵:亀岡亜希子

出版社:文渓社

出版年月日:2000年10月

定価:1,650円(本体1,500円)

 はじめに


   この絵本はクリスマスを舞台にした、美しくあたたかいパステル画の作品です。


   主人公タッチィシリーズは全部で4冊。





 あらすじと随想

   さて、山に住むオコジョ(ヤマイタチ)のタッチィは、人間のトムサおじいさんと

   仲よしでした。

   クリスマスイブは、年に一度、おじいさんの家に、大切な孫むすこで旅行家のヤー

   コポがくる日。


   

   タッチィも一緒に招待されたのです。


   

   みんな、この日の再会をとても楽しみにしていました。



   ところが、ある年の秋、年老いたおじいさんが町へ引っ越してしまいました。彼は

   タッチイの小さな手をとって、別れを告げたのです。



   しかしタッチイは、その年のクリスマス、ヤーコポが山の家に来たら、さぞがっか

   りするだろうと心配し、町へおじいさんを迎えに行きました。



   ところがトムサおじいさんの家が見つからなかったため、その年のクリスマスイブ

   は、代わりにタッチィがヤーコポを迎えようと、クリスマスの用意をしたのです。



   一方、山の家を訪ねたヤーコポは事情を知らず、ドアに貼ってあったおじいさんの

   手紙を読んで、もうこの家でのクリスマスはないと知り、がっかり。



   そのとき、部屋のあかりに気づいて中へ入って行くと、何とタッチィがいたのです。



   そして

   「メリークリスマス!ヤーコポ!さあ、ストーブのそばへどうぞ。ぼく、おじいさ

   んのかわりに きみのこと まっていたんだ」


   というあたたかな声を聞き、ヤーコポはうれしくなりました。



   「ぼくのために?ありがとう、タッチィ。こんなにすてきなクリスマスって、ほか

   にはないよ!」



   小さなタッチィの一途な思いやりが読者の胸を打ちます。



   自分を待っていてくれたタッチィに、ヤーコポは、おじいさんの手紙を見せました。

   そのメッセージが、タッチィをどれほど喜ばせたことか!その理由はぜひ絵本で感

   動を味わってみてください。



 おわりに 

   再会とは、久しぶりに会うことですが、普段一緒に暮らしている人どうしが、朝

   「おはよう」と顔を合わせたり、帰宅した時、「お帰りなさい」「ただいま」と言

   葉を交わすのも、本当は再会の意味を持っているのかもしれません。



   それはひとり暮しでも同じでしょう。

   人の生は死と隣り合わせですから、内なる自分自身に会えるのも、決して当たり前

   ではありません。



   まして本書のように一年ぶりの再会となれば、めったにない有り難いこと!



   携帯電話やスマートフォン圏外のこの絵本ですが、思いやりに満ちた再会の喜びを

   何度でも味わわせてくれます。



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