この絵本を子どもたちに読み語ると、帽子の在り処を見つけようとして、どの子も、
各場面の絵をていねいにゆっくり見ようとします。そして最後に見つかったとき
は、「あったー!」とポッポさんと一緒に大喜びするのです。
お正月に、ご近所の3歳の颯太君と一緒に読みました。最後まで読み終わり、ポッポ
さんの帽子も見つかったので、一件落着!と思いきや、「もっかい!」と催促されま
した。すでにポッポさんの帽子がどこにあるか、わかっていても確かめたいようです
し、帽子の見つかる場面では、「ここだよ」と画面にさわったりします。
絵本の構成事体が、まず見返しから扉にかけてクイズのように、読み手の好奇心をそ
そります。子どもたちが何度でも、この絵本が楽しめるような作りになっていること
に、ハッとします。わかりそうでわからない、クイズのような絵本だからおもしろい
のでしょう。お日さまが照り始める場面が近づくと、「もうすぐ、わかるよ!」と颯
太君も言いました。
彼は「心配しなくても、だいじょうぶ。」というクックルの言葉が好きで、日常でも
よくこのクックルのセリフを使うと、お母さんが教えてくれました。
帽子の在り処がわかっていても、何度でも楽しめるのは、絵本だからでしょう。絵と
言葉の織り成す文化財、そして自分の見たい場面や絵を確かめたい画面を自由に戻し
たり、飛ばして先を繰って見ることができるのも、絵本の長所に違いありません。
またこの絵本では、さまざまな雪景色が見られるのも、大きな魅力です。
表紙の雪空のグラデーションに始まり、各場面ごとに、空模様が違っています。
雪の中をとんがり山に向かう7羽のこばと郵便隊の真剣な姿も、雪の野原をおしゃべ
りかささぎの巣に向かう姿も勇壮で、7羽のこばと達の心意気が伝わってきます。
そして、ポッポさんの帽子の見つかる、輝くお日さまの場面は何といっても感動的
です。
読み語る皆さんもうれしくなるでしょう。さらに、ポッポさんの最後のセリフの誠実
な言葉は、威厳とぬくもりに満ちているので、ポッポさんの人柄(鳩柄)が伝わって
くるようです。
最近は手紙よりメールの用いられる機会が、多くなりました。しかし、雪の降る中も
帽子を探して仕事をしようというポッポさん達の姿に、胸の熱くなる思いがします。
この絵本を読んだ後、ポッポさんに絵手紙を書きたくなる子どもたちもいるのでは
ないでしょうか。