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絵本「ポッポさんのぼうし」のあらすじや随想
 
この絵本について: なくなった帽子を見つける喜びが味わえる

作・絵: フェ―ベ・シッラーニ 

文:高原典子 

出版社:Gakken(学研ワールドえほん セレクション )
      
出版年月日:2023年 12月1日

定価: 430 円


   
 はじめに


   この絵本は、学研ワールドえほんセレクションの一冊です。 

   「学研ワールドえほん」は35年以上もの間、幼稚園・保育所・子ども園を対象に月刊 

   保育絵本として出版され、読み継がれてきたルーツがあります。海外で出版された 

   絵本を邦訳するのではなく、直接、海外の作家さんに依頼したオリジナルな作品ばか

   りなのです。

   この絵本の作者フェ―ベ・シッラーニさんは、イタリアでイラストレーターとして活

    躍しています。くっきりとした鮮明な画風、登場人物の表情もていねいに描写され、

   年齢を超えて、読み手の想像力を豊かに引き出してくれます。 
 
   
 
 あらすじと随想


   雪のふる日のこと、こばと郵便局長ポッポさんの帽子がなくなってしまいました。

   ポッポさんは、“帽子がないと郵便配達ができない”と、あわてます。

   そして、コーラス隊の鳥がかぶっていったのではないかと疑い、他の郵便局員と皆で

   探しに行きました。

   ところが、コーラス隊はおそろいの赤い帽子をかぶって、コンサートの練習をしてい

   る真最中。郵便局のこばと達が7羽も来たので、歌を聴きにきてくれたのだと勘違い

   しました。

   次にポッポさんとこばと郵便局員が探しに行ったのは、おしゃれ池のがちょうのとこ

   ろ。しかし、そこにも帽子はありませんでした。

   

   こうして、ポッポさんと皆は、雪の中をとんがり山のコンドル家族のところへ。次

   は、おしゃべりかささぎのところへ、そしてアイスホッケーの試合中のきつつき選手
   
   たちのところへも探しに行ったのです。
   
   ところが、帽子はどこにもありませんでした。

   ポッポさんはがっかりして、「ああ、わしの帽子はいったいどこへいったのか」と

   嘆きます。すると親切なこばと郵便局員のクックルが「心配しなくてもだいじょう

   ぶ。空も晴れてきたし、きっと帽子は見つかりますよ」と励ましました。

   やがてお日さまが出てくると、ポッポさんの帽子は、本当に見つかったのです。

   それは、意外なところにありました。

   
   
 随想とまとめ


   この絵本を子どもたちに読み語ると、帽子の在り処を見つけようとして、どの子も、 

   各場面の絵をていねいにゆっくり見ようとします。そして最後に見つかったとき 

   は、「あったー!」とポッポさんと一緒に大喜びするのです。 

   お正月に、ご近所の3歳の颯太君と一緒に読みました。最後まで読み終わり、ポッポ

   さんの帽子も見つかったので、一件落着!と思いきや、「もっかい!」と催促されま 

   した。すでにポッポさんの帽子がどこにあるか、わかっていても確かめたいようです

   し、帽子の見つかる場面では、「ここだよ」と画面にさわったりします。 

  

   絵本の構成事体が、まず見返しから扉にかけてクイズのように、読み手の好奇心をそ

   そります。子どもたちが何度でも、この絵本が楽しめるような作りになっていること
 
   に、ハッとします。わかりそうでわからない、クイズのような絵本だからおもしろい
 
   のでしょう。お日さまが照り始める場面が近づくと、「もうすぐ、わかるよ!」と颯
 
   太君も言いました。
 
   彼は「心配しなくても、だいじょうぶ。」というクックルの言葉が好きで、日常でも
  
    よくこのクックルのセリフを使うと、お母さんが教えてくれました。

   

   帽子の在り処がわかっていても、何度でも楽しめるのは、絵本だからでしょう。絵と

   言葉の織り成す文化財、そして自分の見たい場面や絵を確かめたい画面を自由に戻し

   たり、飛ばして先を繰って見ることができるのも、絵本の長所に違いありません。

   

   またこの絵本では、さまざまな雪景色が見られるのも、大きな魅力です。

   表紙の雪空のグラデーションに始まり、各場面ごとに、空模様が違っています。 

   雪の中をとんがり山に向かう7羽のこばと郵便隊の真剣な姿も、雪の野原をおしゃべ 

   りかささぎの巣に向かう姿も勇壮で、7羽のこばと達の心意気が伝わってきます。  

   そして、ポッポさんの帽子の見つかる、輝くお日さまの場面は何といっても感動的 
     
   です。

   読み語る皆さんもうれしくなるでしょう。さらに、ポッポさんの最後のセリフの誠実 

   な言葉は、威厳とぬくもりに満ちているので、ポッポさんの人柄(鳩柄)が伝わって 

   くるようです。

   最近は手紙よりメールの用いられる機会が、多くなりました。しかし、雪の降る中も 

   帽子を探して仕事をしようというポッポさん達の姿に、胸の熱くなる思いがします。 

   この絵本を読んだ後、ポッポさんに絵手紙を書きたくなる子どもたちもいるのでは

   ないでしょうか。 

   
         
   
      
  

  

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