実は、私にとっては、まだ冬が続いているようなこの頃です。現在、呼吸器治療中な
のですが、マフラーが無いと首が寒いのです。それなのに、マフラーを失くすという
失敗をやらかしたので、新しいえりまきの到着を待っているところです。(笑)
本当は、この絵本は寒い季節にふさわしい作品なのでしょうが、心に一抹の冬を抱え
る私には、是非皆さんと春の喜びを共感したい一冊となりました。
たいこの音には、生命力豊かな迫力が感じられます。
この絵本では、うさぎがドーン、ドーンとたいこを10も20も叩き、目をつぶる度に景
色が変わり、ワクワクするのです。
きっと、目をつぶるという動作にも、大きな秘密があるのでしょう。
目をつぶるというのは、現実からの情報を遮断し、想像力を活性化させるのでは
ないでしょうか。
目に見えるものだけに囚われていると、真実を見逃してしまうのかもしれません。
祈る時に目を閉じることが多いのも、そうした理由があるのでしょう。
私がキリスト教主義幼稚園に通っていた5歳の頃、夜、家族に「おやすみなさい」と
いうと、クリスチャンではない継母から「ちゃんとお祈りしたの?お祈りしてから寝
なさい」と言われました。そこで私は目をつぶり、両手を組んで、心の中では小生意
気にも、「神さま、ママは神さまにちゃんとお祈りしていないのに、なぜ私にお祈り
させるのかな?おしえてください」と、祈りしました。私にとってのその当時のお祈
りは、愚痴っぽかった気もします。と同時に、納得のいかない理不尽な強制に対し
て、目をつぶる手段でもありました。
目を閉じると、集中力が増してお祈りモードになれるのは、本当に不思議です。
だから、優しいくまの楽器屋さんが、うさぎにたいこを叩くように勧めるだけでな
く、たいこの音の余韻を聴き、想像力をより豊かにふくらませるために、目を閉じ
ることを促したのは、理に適っていると思えます。
そして、さむがりうさぎの思い描いた美しく暖かい春を、読者の私たちが目に見える
ように追体験できるのも、絵本という媒体の何とすばらしいところでしょうか。