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絵本「みどりのスキップ」のあらすじや随想
 
この絵本について・・みみずくが守りたかった桜林の
           ファンタジー
                                                                

作:安房直子  

絵:出久根 育 
  
対象年齢:小学校低学年~ 

出版社:偕成社
      
出版年月日:2013年 2月


   
 はじめに


   安房直子さんの「みどりのスキップ」の名作絵童話です。  

   画家・出久根さんの絵に包まれた抒情的な童話は、桜の季節のうつろいを鮮やかに表現 

   しています。ページを繰るのも惜しいくらいに、桜の花の美しさとはかなさが場面いっ 

   ぱいに表現されているのです。絵本ならではのすばらしさでしょう。 

   読者の皆さん、どうぞ心ゆくまで、このファンタジーの美しさと謎を味わってくだ

   さい。 

   
 
 あらすじと随想


   花ざかりの桜林に、一匹のみみずくがいました。毎晩、大きな目玉をぴかぴか光ら

   せ、あやしいものが入り込まないように、寝ずの番をしているのです。何を見張って

   いるのかというと、桜の精の「花かげちゃん」を守るためでした。薄桃色の着物を着

   たかわいいその女の子の顔をみみずくが見たのはたった一度だけでしたが、それ以

   来、林に雨が降らないように、風が吹かないように、だれかが花かげちゃんをさ

   らっていかないように、そして桜の季節が終わらないようにと番をしていたのです。

   だれかが美しい桜をちょっとでものぞきこもうものなら、すぐに飛びかかれるように、

   爪もくちばしもよく磨いておきました。

   ですから、たぬきの親子も、雨こぞうも風のおじさんも、みみずくの大きな目にひと

   にらみされると、怖くて震え上がりました。

   

   ところが、四月のある晩、大きなこうもりがさをさした小さなだれかが、花ざかりの
   
   林に飛び込んで来たのです。みみずくは、「追いかけられているんだ。見逃しとく
   
   れ」という声を聴き、猟師に追いかけられているだれかだと思いました。そして「し

   かたがない、通れ。花には、指一本さわるなよ」と、見逃してやったのです。

   しかし、あたたかい風が吹き、夜が明ける頃になると、みみずくは激しい睡魔に襲わ

   れ、目を開けていることができなくなりました。トット トット トットという驚くば

   かりに勢いあふれる足音なのに、まぶたが開かないのです。
   
   

   そして次の晩に目をさますと、林のようすが違っていました。

   花かげちゃんは「とうとう、みどりのスキップが、やってきたわ」といいました。

   みどりのスキップとはだれなのでしょう。

   みみずくは、きつねの奥さんが入れてくれた苦いコーヒーを飲み、何とか眠気を覚ま
   
   そうとしましたが、ついに緑のスキップが桜林になだれこんできました。

   

   そして、花かげちゃんは消えたのです。

   是非、本作で安房直子さんの抒情的な原文と、出久根育さんのユーモアのある幽玄な絵

   を味わい、春から初夏への美しいファンタジーに浸ってください。
   
   
   
 随想とまとめ


   春から初夏への季節のうつろいが見事に擬人化された作品です。   

   薄桃色の美しい着物を着た桜の精、花かげちゃん。その面ざしはほとんど見えないゆえ 

   に一層美しい雰囲気があります。出久根さんの絵筆は多くの場面を桜の花びらで埋め 

   尽くしながら、みみずくが想いを寄せる「花かげちゃん」というふしぎな存在を描きだ

   します。 

   

   みみずくの大きくて鋭いまなざしを桜林の番兵に仕立てた、安房さんの想像力と着想

    の確かさには、息を呑むばかりです。桜林を舞台にした、静かで美しい幽玄な世界の
 
   ようにファンタジーが広がります。 

   ところが、ある日、そこに入り込んだ盗人のようなみどりのスキップの到来が、みみず 

   くを激しい睡魔に襲うのです。その時、きつねの奥さんが入れてくれたコーヒーが、現
 
   実感を呼び起こします。 
 
   

   そして最後のページには、「おまけ」と称して「きつねのおくさんのコーヒー・・・に 

   はかなわないけれど、いつもよりていねいにコーヒーをいれて、みどりのなかへでかけ 

   てみませんか?」というおしゃれなお誘いが書かれています。さらにコーヒーの入れ方
 
   が説明されているのも、桜のファンタジーを次の季節の現実につなげる、この絵本 
 
   のふしぎな楽しさかもしれません。

   
        
   
      
  

  

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