昔、あるところに、正直で信心深いくつやがいました。
働き者でしたが暮らしは貧しく、ついに手元に靴一足分の革が残るだけになりまし
た。
そこで、ある晩、くつやはその革を靴の形に切り、翌日に靴を作ろうと残しておき
ました。そして神さまにお任せし、ぐっすり眠ったのです。
すると、翌朝には、みごとな靴が一足仕上がっていて、まもなくその靴は高い値で
売れました。
そこで靴屋は、今度は二足分の革を仕入れ、夜のうちに靴の形に切っておきまし
た。
すると、翌朝、今度は靴が二足縫い上がっていたのです。
まもなく二足とも高く売れたので、今度は四足分の革を買うことができました。
それからというもの、切った革で、夜の間にすばらしい靴ができあがっているよう
になり、くつやはだんだんとお金持ちになりました。
さて、このように不思議なことが続いたものですから、クリスマス間近のある晩、
くつやは、いったいだれが自分たちの仕事を手伝ってくれているのかを、おかみさ
んと一緒にこっそり見届けることにしました。
すると、夜ふけに現われたのは、裸のままの可愛いこびとが二人!
そして彼らは、休まずにたくさんの靴を縫い上げ、あっという間に消えてしまった
のです。
そこで、くつやの夫婦は、自分たちを裕福にしてくれたこびとにお礼をしようと、
洋服とくつをプレゼントすることにしました。そして小さな洋服と靴を縫い上げ、
次の晩そっと置いておいたのです。
するとこびとたちは大喜びでおしゃれな洋服を着、くつを履いて、その後くつやの
もとには現れませんでした。
この絵本では、くつやの職人さんが魅力的に描写されている絵がすてきです。
また、貧しいくつやを助けたのが、何も持たない裸のこびとという不思議な存在の
尽力であったことにも胸を打たれます。
しかし、誠実で感謝を忘れないくつや夫婦の贈りものに、彼らが労われ、「これで
おしまい、くつづくり♪」と踊りながら出て行く場面は、このうえない喜びにあふ
れています。
こびとたちは、思いやりある人たちから、こんなに素敵な洋服やくつを作ってもら
い、自分たちの役割はもう終わったと思ったのかもしれません。
そのうえ、彼らが来なくても、それからのくつやは、することなすこと、なにもかも
うまくいって、末永くしあわせに暮らしたということですので、こびとにとっても
くつやにとっても、ハッピーエンドがうれしい昔話絵本です。
天からの豊かな祝福が味わえる、クリスマス間近の絵本ではないでしょうか。