この絵本を読み語ると、子どもたちはハラハラドキドキします。
食いしん坊のラージが森の皆の木の実やごちそうまで食べてしまうので、ラージは
春のパーティーに招かれず、仲間外れにされてしまったのです。
森のパーティーを楽しく行うためには、ラージを省くしかないのでしょうか。
しかし、ラージも森の仲間のひとりだと思いたい読者には、ちょっとした葛藤が生ま
れるかもしれません。
最近、ご近所の翔太くん(5歳)、颯太くん(4歳)、りんちゃん(3歳)の兄弟妹と
一緒に、この絵本を読みました。
すると「ラージが仲間はずれにされることに抵抗を示す」弟の颯太くんも「森の動物
たちの気持ちを尊重したい」兄の翔太くんも妹のりんちゃんも、他の動物たちが、
ラージに内緒でパーティ―の準備をする場面で、驚きの表情をしました。
ところが、森の火事というハプニングが起きた時、三人は、ラージの思いやり
あふれる勇気に心を動かされ、「ラージ、がんばれ!」「ラージ、がんばれ!」と
ラージを応援し始めたのです。森の仲間を助けようとするラージの大きさこそ、森と
動物たちの窮状を救うことができると予想したからでしょう。
最初に、食いしん坊という少し困った個性で登場したラージも、森の仲間たちの役に
立とうとする頼りになる一面がクローズアップされ、体の大きなラージらしさが輝き
を増したのです。
このラージによる救済場面を読んだ後、兄の翔太くんは「ラージはすごくやさしい
んだね!でも、やっぱりごちそうは、みんな、同じくらいいっぱい食べられたら、い
いな。森のごちそうはおいしいんだから」と言いました。一方、ラージが仲間はずれ
にされたことを心配していた弟の颯太くんは、「ラージが、みんなといっしょにパー
ティ―に出られて良かった!ラージはみんなを助けたし、体も大きいから、ラージに
は森のごちそうをみんなよりいっぱいあげたいな!」と言ったのです。
妹のりんちゃんは、「最初にラージに『全部、食べないで!』って頼めばいい」と言い
ました。
この絵本が感動を呼ぶのは、ラージに食いしん坊という困った面があるだけではなく、
森の救済者にもなった意外性に秘密があるのでしょう。
ラージの体の大きさが森の食物を独占する場合と、森の火事を消すほどの威力を発揮
する場合があることも、読者の子どもたちの思考や想像力を広げるのに役立つと思い
ます。
擬人化された森の世界で共生する動物たちが、どうしたら仲良く幸せに暮らせるか、
読者の子どもたちが柔軟に思いをめぐらせられる絵本かもしれません。
どんな人にも個性があり、長所にも欠点にもなります。
その全部が、ラージらしさであり、その人らしさなのでしょう。
この絵本のハッピーエンドがどんな展開になるのかも、とても楽しみです。
絵本を読んだ後、余韻にひたっている子どもたちに感想を聞くのは避けた方が良
いですが、それぞれの子どもの考えが思いがけずに表現できたり、お互いに聞け
たりするのは、とても良いコミュニケーションのチャンスなのではないでしょうか。