寒いクリスマス・イブのこと、一人の女の子がお使いに行く途中で、赤い大きな手袋
を見つけました。そして、きっとサンタさんが落とした片方の手袋に違いないと思
い、“届けてあげよう”と思いついたのです。でも、サンタクロースの居場所は、ど
うやって見つけたらよいでしょうか。走りながら考えました。
その時、教会の前でいいことを思いついたのです。
“教会の高い塔に登れば町中の煙突が見えるはず!”そこで、女の子は塔のてっぺん
まで続いている、たくさんの階段を昇りました。すると、遠くの港や雪の積もった
山々も、近くの町の風景も全部、見渡せました。
目をこらして探すと、サンタさんの居場所も見つかったのです。
驚いたことに、そこは、彼女の家の屋根の上でした。
女の子は、“サンタさん、待っててね”という思いで、一生懸命家路を急ぎました。
そして自宅に着くとサンタさんに「はい、サンタさん おとしものですよ」と手袋を渡
したのです。サンタさんは「これは 最高のプレゼント!どうもありがとう」と喜びま
した。
そして、彼女に「はい、プレゼントをどうぞ、メリークリスマス!」と箱を渡してく
れたのです。さて、心躍るサンタさんからのプレゼントは、何だったでしょうか。
是非、絵本で確かめてごらんください。
〇子どもたちに読み語るときの工夫
この絵本は、かわいい絵からも、心はずむストーリィが読み取れます。
子どもたちに読み語る場合、主人公が教会のたくさんの階段を駆け上る場面では、女
の子の動きに合わせて、読者の子どもと一緒に“よいしょ、よいしょ”などと、かけ
声をかけると良いでしょう。読者年齢が幼いほど、無理のない範囲で読者参加型にす
ると、子どもたちがイマジネーションをふくらませやすくなります。
サンタさんの居場所が見つかる場面も、「あのえんとつ!あのおうちは・・・?」と
いう文に合わせて間を取った後、子どもの返答を待つと読み語りが盛り上がるでしょ
う。
絵を見ながら、対話もしやすいです。
最終のひとつ前の場面では、「さて、サンタさんからのプレゼントは何でしょう?」と
質問し、子どもの考えを聴いてあげると良いのではないでしょうか。
色々な意見が出たり、その子自身の欲しいプレゼントがわかったりして、おもしろい
意見交換の場になります。
裏表紙の前の見返しには、クリスマスケーキを前にして、女の子が両親にサンタさん
との出会いやプレゼントのことを話す楽しい場面がありますので、忘れずに読者に見
せてあげましょう。
〇独創的な作画方法
ところで、三浦太郎氏はどのようにして、洗練されたすばらしく精緻な画風の絵本を創
作するのでしょうか。
作者によれば、作画に当たって、まずデジタルで完璧に下絵を描くそうです。さら
に、その下絵に合わせて、すべてのパーツを切り分けます。それを今度はスキャン
して、シルエット状態にし、パソコン上で色をつけていくそうです。このように、デ
ジタルな作業だけでなく、自分の手を加えて机の上で作り直したりする、アナログな
要素を入れることによって、全然違う絵のあたたかみが表現できるといいます。
さらに、下絵に合わせて切ったパーツをスキャンし、今度は保管用に、のりで白い紙
に貼り付けていく作業をひたすら繰り返すそうです。気の遠くなるような仕事です
が、デジタルだけの作業だと、グラフィカルでデザイン的な作品になってしまう
ため、日本で出版する絵本には手作業を加え、柔らかみを出す工夫をするそうで
す。
🎄読者の皆さまも、本書を楽しみ、どうぞすてきなクリスマスをお迎えください。
🎅Merry Christmas!