主人公はとかげの男の子、ちょろりん。
寒がりやのちょろりんは、冬が近づいたある日、かあさんに頼まれたお使いに行く
途中、大通りの洋品店で暖かそうなはらっぱ色のセーターを見つけました。
そのセーターがどうしてもほしくて、帰ってかあさんに頼みましたが、かあさんも
とうさんも首をたてにふりません。
貯金箱を調べると、セーターを買うためには透きとおった赤いお金があと2つ足り
ませんでした。
そこで、彼はランプづくりをしているじいちゃんのところへ行き、事情を話すと、
じいちゃんは、一晩自分の仕事を手伝ったら、足りない分のお金を上げてもいいと
言ってくれたのです。
その晩、ちょろりんはじいちゃんのそばで、眠気と戦いながら53個のランプのガ
ラス磨きをしました。そして明け方の寒さの中、ランプを全部、枯葉に包み、だい
じにじいちゃんの大八車に乗せて、一緒にランプやさんへ運んだのです。
じいちゃんは、おかげで仕事がはかどったよといって、約束どおりちょろりんにお
駄賃をくれました。
「ありがとう!」
それを持って彼は、セーターを買いに走りました。
ところが、めざすセーターはとかげの着るセーターではなく、ヘビ用のセーター
だったのです。
何と悲しいこと!ちょろりんの涙は止まりませんでした。
すると、洋品店のびきびきおばさんは・・・。
主人公がとかげの本書では、表紙の絵からすでに、物語の流れがわかり、みごと
です。さらに、とびらの次の場面で、俯瞰的にとかげの町や住人の様子が紹介さ
れ、説得力がありますし、裏表紙のじいちゃんとちょろりんの背中の、何と感動
的なことでしょう。
そして、じいちゃんの歌に合わせて、ちょろりんがランプを磨く夜の場面は、美し
い想像力に満ちた一篇の詩のようです。
登場人物の中でも、ランプづくりのじいちゃんは、ちょろりんの願いを叶える応援
者の一人として、大きな役割を果たしていますが、そのモデルは降矢さんの実のお
じいさんだそうです。
子どもに接する時、このじいちゃんのようでありたいと憧れます。
子どもの気持ちを理解し、子どもを信頼して成長に導く、心あたたかいおとなのモ
デルを絵本から学べるのは、幸せなことだと思います。
子どもたちも、自分の夢を懸命に叶えようとする主人公の姿から、勇気をもらうこ
とでしょう。
降矢なな作・絵の絵本には、他に『ちょろりんととっけー』『やもじろうとはり
きち』『ナミチカのきのこがり』などがあります。