えほんのいずみ

絵本「ひとりぼっちのミャー クリスマスのよるに」のあらすじや随想

 この絵本について―いじめからの解放―

作・絵: たしろちさと

訳: ピーター・ミルワールド

出版社:女子パウロ会

出版年月日:2014年10月1日

定価:1,210円(本体1,100円)

 はじめに

   この絵本の絵は、大きな構図で登場人物の特徴をよくとらえ、あたたかみがある

   ので、クリスマス会などでの読み語りにも適しているでしょう。

   たしろちさとさんによって日本語で創作され、それがピーター・ミルワールド氏によっ

   て英語に翻訳されたので、本文が英語と日本語の両方で表記されている点も、魅

   力です。


 あらすじと随想

   さて、クリスマスの前日、ひとりぼっちの野良猫ミャーは、寒さにふるえていまし

   た。クリスマスのお祝いどころか、わずかな食事にありつくことさえできないので

   す。

   

   あたたかそうな家の窓から白ねこに「まあ、きたないねこ、あっちへいって!」と

   言われ、レストランの残飯をあさりにいった裏通りでも、コックに追いはらわれま

   した。ひもじくて、なみだが凍りつきそうでした。


   雪の中、自動車の下だけは暖かそうだったので、近よって行くと、そこにひそんで

   いた大きなねこたちが、追いかけてきました。もう、逃げ場がありません。その時、

   赤いそりの上の白い大きなふくろの口が開いていたので、ミャーは、どんどん奥へ

   逃げこみました。


   すると、いつのまにかあたたかい袋の中で眠ってしまったのです。やがて袋ごと空

   の上を運ばれ、目がさめた時には、赤い服を着て赤い帽子をかぶったおじいさんの、

   赤い手袋の手の中!



   その人は
 
   「おやおや、おまえはどこからきたの?かみさまがくださったプレゼントかな?」
 
   と、ミャ-を暖かな自分の家へ連れて行ってくれました。ミャーもおじいさんもし
 
   あわせでした。
 
   このおじいさんが誰なのかは、もうおわかりですね!
 

 おわりに

   写実的な絵ではないのに、主人公のおびえた表情や動作、細い手足のやせた体には、

   さみしさとひもじさがにじんでいます。


   誰からもうとまれ、いじめられた孤独なミャーですが、多くの場合、子どもがいじ

   めを受けている時、家族がいても心は孤独なことが多いかもしれません。


   この絵本では、読者が、ミャーの心情に一体化できるだけに、脱出の道が与えられ

   た時の安堵感は、天にも昇る気持ちです。


   何よりミャーが全速力で逃げ、隠れ場が見つかった時のうれしさ!そして愛に満ち

   た味方に出会えた喜び!

 

   地をはいつくばるように生きてきたミャーが、空を行く慈愛の人に出会えた幸せに

   励まされます。


   希望というすばらしいプレゼントを子どもたちに届けてくれる絵本でしょう。





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