はじめに
本書の女流作家ユッタ・バウアーさんは、ドイツの児童文学作家でありイラストレー
ターです。2010年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞。
この絵本の原題は「OPAS ENGEL」です。
すなわち「おじいちゃんの天使」と訳せましょうか。
最初ドイツで出版され、あっという間にヨーロッパ中の読者を魅了したようです。絵
はシンプルな線描と水彩で描かれていますが、何ともいえないユーモアとあたたかみ
があります。
著者による創作絵本として数々の賞を受けた『色の女王』(小学館)やママのぬくも
りが見直せる『おこりんぼママ』(小学館)、『羊のセルマ』(二見書房)などもあ
ります。
あらすじや随想
ホスピスに入院中のおじいちゃんを孫の「ぼく」が訪ねると、「ぼうや、わしはなに
をしても、うまくいったんだぞ・・」とよく言いました。
子ども時代のおじいちゃんは、いつもいちばん勇気があって、どんな危険なチャレン
ジも成功したそうです。
おとなになってからは、大きな戦争や闇のようなヒトラーの専政時代があり、大切な
友だちが連れていかれ、絶望しそうな時もありました。
しかし、いろんな試練はあったけれど、幸運にも恵まれ、数々の危険を乗り越えるこ
とができました。そしておばあちゃんと出会い、やがてぼくのおじいちゃんになった
のです。
「わしはとても幸せだった」といいます。
おじいちゃんは気づかなかったようですが、おじいちゃんが幸運に恵まれたのは、い
つもそばに、おじいちゃんを助けてくれるだれかがいたからかもしれません。
やがて、おじいちゃんは・・。
そして、本当はぼくも守られているのです。
この作品はユーモアをもって、そのような存在に気づかせてくれるでしょう。絵があ
るからこそ、表現できた傑作です。
随想とまとめ
思えば、私自身も、目に見えないけれど大いなる存在にいつも守られ、助けられてき
たことに気づき、感謝します。
たとえば、三度の舌ガンをはじめ重篤な病を何度か患いましたが、早目に病への気づ
きが与えられ、大学病院でもわからなかった病を、町のお医者さんに見つけて頂いた
りもしました。そして治療の機会が与えられ、今も少しずつ癒やされています。
しかし、33年前の脳腫瘍の術後、ICUで看護師さんがそばにいない時、呼吸が苦し
くてたまらなくなったことがありました。
その時、私はクリスチャンではなかったけれど、声を出さなくても心で伝えられる神
さまに、「困った時の神頼みですけど、神さま、苦しくて死にそう!助けてくださ
い!」と祈ると、一瞬で呼吸が楽になりました。
きっと友人たちのあたたかいお祈りや、大いなる存在に守られたのでしょう。
それからは、困った時もうれしい時も、天を仰いでお祈りすることにしています。
そして今もいのち与えられ、希望を持つことができて、ありがたいです。
この絵本のおじいちゃんのように、私たちは、さりげなく偶然を装って守られている
のではないでしょうか。でも、目にみえないので、守られ助けられていることに気づ
かないことが多いのかもしれません。
しかし、本書は、今までの不思議な守りや最善の出会いに気づくきっかけを与えてく
れる気がします。
読後、多くの読者さんがユーモラスな天使の助けに元気をもらえるでしょう。
持ち運びしやすく小型なのもうれしい絵本です。