ある日、ブタくんが森の中をトットコ歩いていると、「ふしぎなキャンディ―やさ
ん」がありました。
彼は、お店のタヌキのおじさんに、どんなふうにふしぎなのかを聞きました。
するとおじさんは、「ここにあるキャンディ―は、なめるとふしぎなことがおこるん
だよ」と言って、気前よく黄色いあめをくれました。
ブタくんがなめてみると、目の前の大きな岩を持ちあげるほどの力持ちになったので
す。ただし、キャンディ―をなめている間だけ。
次におじさんは、「ガオーッ」とこわいライオンの声が出る、青いキャンディ―をく
れました。でも、なめ終わると「ブヒ、ブヒ」といういつもの鳴き声。
緑のキャンディーは、体が透明になり、赤いキャンディ―は、なんと体がオオカミに
なりました。
そこでブタくんは、タヌキのおじさんに、赤いキャンディ―を3つと緑のキャン
ディ―を1つ頼みました。すると親切なおじさんは、困った時になめると良い白い
キャンディ―も、おまけに、ビンに入れてくれました。
ブタくんは「ありがとう」と受け取ってから、「よーし、いたずらしちゃえ」と、赤
いキャンディ―を3ついっぺんになめてオオカミになり、森の仲間をおどかしたので
す。みんなはびっくりして逃げ回りました。
ところが、そこへやってきたのは、本物のオオカミ!
オオカミは「だめだ、だめだ、へたくそ!あんなんじゃ、ネズミだってつかまえられ
ないぜ!」と言ったのです。
するとブタくんは、本当はオオカミが怖くてたまらなかったのに、「ついてこい。教
えてやる」というオオカミの誘いにのって「よ、よろしくおねいします」と言ってし
まいました。
連れていかれたのは、オオカミだらけのオオカミの町。
みんなが、ブタの匂いがすると言って、ブタくんのところへ集まってきました。
ところが、赤いキャンディーをなめ終わった彼の体は、だんだん元のブタの姿に!
急いで緑のキャンディ―を口に入れ、今度は透明ブタになって逃げました。
しかし、キャンディ―をなめ終わると、またいつものブタに戻ってしまったのです。
そこで、おまけにもらった白いキャンディーをあわてて口に入れると・・・。
さあ、ゆかいな結末は、是非絵本でご覧ください。
本書は、4歳くらいから小学校低学年の子どもたちに大人気の絵本です。
私も6歳の孫息子と楽しみました。
どの色のキャンディ―だと、どんな変身ができるのか、「やっぱり緑のキャンディ―
がほしい!」などと、会話がはずみました。
万事休す!と思っても、ふしぎなキャンディーに次々に助けられるブタくんです。
ふしぎな力を持つと好奇心に駆られ、ブタくんのように何かいたずらしたり、その力
を試してみたりしたくなるのが、自然な心理かもしれません。
超越的な力を持つ者、自分以外の者への変身願望は、成長の段階として子どもたちが
みな持っています。おとなも持っているでしょう。
しかし、変身の末、次々に怖い思いをしたブタくんだからこそ、「ふしぎなキャン
ディ―はすごかったけど、やっぱりふつうのキャンディ―がいいや、エヘへへ・・・」
と笑う結末に、安堵感が漂います。
ハラハラドキドキした後は、ふつうのキャンディ―で美味しさを味わいたい。
安心して自分でいられることの幸せ、日常性が守られる安心感を読者のみなさんも再
確認できるのではないでしょうか。