本書は、クリスマスを一緒に迎える少年ともみの木のかけがえのない友情の絵本です。
小さなもみの木の視点に立って物語が書かれ、木が与えてくれるあたたかな希望の
力に気づかせてくれます。
ある野原に小さなもみの若木がありました。大きなもみの森からはずれ、ひとりぼっ
ちなので寂しく思っていました。
ところが、その冬、男の人が来て、小さなもみの木を根ごと大事に掘り、家へ連れ
て帰ったのです。
そのお父さんの家には、森へ行ったこともない病気の男の子がいて、もみの木が、
クリスマスを一緒にお祝いするために来てくれたことをとても喜びました。
もみの木は、その少年のベッドのそばで緑に茂り、かぐわしい香りを放ちました。
そして色とりどりの飾りをつけてもらい、輝くクリスマスツリーになったのです。
夜には、子どもたちが集い、にぎやかにクリスマスのお祝いをしました。
春になると、もみの木は森に帰してもらいましたが、次の年の冬も男の子の家で過
ごし、あたたかいクリスマスを迎えました。
そして、春からはまた森はずれで大きく成長していったのです。
しかしその次の冬は、だれも迎えに来なかったので、ひとりぼっちのクリスマスを
思うと、もみの木は寂しくてたまりませんでした。
木と少年には、歩けないという共通点がありました。
しかし出会いを作ったのは、少年のお父さん。
お父さんはわが子ともみの木の両方に愛情を注ぎ、神さまのように両者の成長を願っ
たのです。
すると、雪の晩、凍てついた野原を越えて・・・。
もみの木が年ごとに成長し、冬も輝かしく緑に香り、少年の心に希望の光を灯し続
けたことが、彼のベッドサイドの絵からも読み取れます。
ところで60年以上も昔のこと、小学校入学時の記念樹として、祖父が庭の隅に白木
蓮を植えてくれました。
その木はすぐに私の背を追い越し、グングン大きくなりました。
私は子ども時代から背が低く、朝礼の時などいつも一番前に並んでいただけに、きょ
うだいのような木蓮の木の成長が速いのは、とても頼もしいものでした。
やがて木蓮が白い蝶のように大きな美しい花を咲かせた時には、自分の手柄でもな
いのに大喜びし、我がことのようにうれしかったのを覚えています。