さて、ことちゃんという女の子の家には、鳩時計があります。
毎朝、鳩時計の窓から「くくう くくう・・」とおもちゃの鳩が頭を出して、鳴くので
す。
ことちゃんの家の猫のねねこは、いつもその鳩と遊びたくてたまりませんでした。
ある日ねねこは、ことちゃんが出かけた後、たんすに飛び乗ってじっと鳩が出てくる
のを待ちました。
そして「くくう」と鳩が出てきた時、手を伸ばして鳩にさわろうとし時計を壊してし
まったのです。
もう鳩は鳴かないし、窓から出てきません。
ねねこは、しかたなく「にゃんにゃん」といって、たんすの上に戻りました。
さて、ことちゃんが家に帰ると、鳩時計が壊れているので、びっくり!
そこで鳩時計をカートに乗せて時計屋さんまで運び、
「とけいやさん、うちの 鳩時計 鳩が出てこないの。ねねこが 頭をたたいたから
よ。きっと。直してくださいな」と言いました。
すると、鳩時計だけでなくネコ愛にもあふれる時計屋さんは、ねねこに小さな家を
作ってくれたのです。
丸い窓のあるかわいい家で、ねねこは大喜び!
その家をたんすの上に置いてもらうと、とてもすてきな猫時計になりました。
どんな時計かは、ぜひ絵本でご覧ください。
猫は暖かい空間はもちろんのこと、狭くて小さな段ボールなどに入りたがる習性があ
るようです。
わが家にいた保護猫たちも、ちょっとダンボール箱を置いておくと、よく何匹も一緒
に狭い所に入っていました。うちでは、それを猫の箱詰めと呼んでいました。
ですから、ねねこも鳩と友だちになりたくて、鳩のいるちょっと窮屈な時計の中に
入ってみたかったのでしょう。
本書には、ねねこが鳩時計にさわろうとする仕草がたくさん描かれていますが、その
何ともかわいいこと!
子どもたちだけでなく、猫好きさんも、うれしくなる絵本でしょう。
ところが、ねねこは、勢いあまって時計を壊してしまいました。
しかし壊してもことちゃんに叱られたりはしなかったのです。
それどころか、鳩と鳩時計に興味を持っている猫ということで、時計屋さんに家まで
作ってもらったのですから、しあわせな猫でしょう。
さらに猫時計として、ねねこのおもしろさが加わるのです。
いたずらも温かく見守られたというお話の流れがあるので、いっそうこの絵本のほの
ぼの感が増すのではないでしょうか。
ことちゃんとねねことの仲の良さ。
最後の場面でお母さんがおやつを持って登場し、猫時計になったねねこに寄り添うあ
たたかさにも、心がぬくもります。