さて、本書の最初の場面は星空に天文台と流れ星の絵。
「このおはなしは ひみつだよ」と書かれた文に、子どもたちはワクワクするでしょ
う。
主人公は天文台の助手をしている「ぼく」。
ある晩、博士とぼくがふたりで星の観察をしていると突然ドーン!と大きな音がし
て、うら山の湖に空飛ぶ円盤が不時着しました。
ぼくたちは驚きましたが、中から宇宙服を着た五人の宇宙人が出てきたので、急いで
その人たちを救助し、天文台に連れて来ました。
ところが、宇宙服を脱いだ宇宙人たちは、なんと五人ともネコそっくりのかわいい姿
だったのです。
彼らは天文台の望遠鏡をのぞき、あの星が自分たちの故郷なのだといいました。
しかし、博士は、もう円盤が湖に沈んでしまっているので、あの星へは帰れないと説
明しました。
すると宇宙人たちは、天文台でもらったカップラーメンを食べた後、今後のことにつ
いて額を寄せ合ってしばらく相談したのです。
しかし結局、この星に住むしか方法はないとあきらめたようでした。
カップラーメンを食べたということは、この星の水、この星の食べ物を口にしたとい
うことですから、暮らせないことはないでしょう。
そこで博士とぼくは夜の間に五人の宇宙人たち、つまり五匹のネコたちを・・・。
ですから今でも彼らはネコとして、この星で暮らしているでしょう。
彼らを見つけるポイントは、星を見ているネコだということです!
ところで私事ですが、ある秋、我が家の庭に見慣れないネコが餌を食べに現われたこ
とがありました。
よく屋根に身を潜めている美形のネコでした。
多分、うちが四匹の地域猫を保護していたので、誰かが庭にこのネコを置いていった
のでしょう。
しかし、我が家にはしっかり者の先住ネコがいるので、見つかると、すさまじい縄張
り争いになりました。ですから、このネコは誰もいない時を見計らって、そっと餌を
食べに来たのです。
私たちはこの雄ネコを新入りの新ちゃんと呼んで、先住ねことは別に餌を上げなが
ら、何とか里親さんを探すことにしました。
猫ボランティアさんにも相談したところ、新ちゃんの写真がほしいといわれたので、
できるだけ鮮明に撮れた写真をお渡ししました。
すると、美形ゆえか予想外に早く里親さん候補が見つかり、彼の行き先が決まったの
です。
そこでそっと捕獲し、猫ボランティアさんに連れて行って頂いたら、このネコは女の
子だったことがわかりました。
「だから、新ちゃんではなく、新子ちゃんと呼ぶわ!」といわれました。
新子ちゃんのいなくなったうちの屋根は寂しくなりましたが、寒くなる前に里親さん
のもとで暮らせるようになったので安心しました。
でもあの新子ちゃんは、もしかすると宇宙人だったのかも・・。
そんなおもしろい空想ができるような、このユニークで楽しい絵本に出会えて良かっ
たと思います。
きっとこの絵本の宇宙人たちも、ネコとして地域になじみ、幸せに暮らしているので
はないでしょうか。
美しい夕焼けの場面に描かれたたくさんのネコに、作者の愛情が感じられます。