雨の日、主人公の女の子が窓の外を見ながら「おとうさんは きょうは はれるって い
ってたけど、・・・おとなのいうことは けっこう はずれるな」と考えていると、学校
から帰ってきたお兄ちゃんが、言いました。
「ねえねえ、しってる? みらいはたいへんなんだぜ。ぼくたちが おとなになるころ
は たいへんなことしか ないんだってさ」
食べ物がなくなったり、病気が流行ったり、戦争が起きたり、地球が壊れたりする。
そんな未来がやってくるとおとなが言っているよと。
女の子は落ち込んで、おばあちゃんの部屋へ行き、「おばあちゃん、みらいがたいへ
んなの・・・」と言いました。
すると、おばあちゃんは布団から半分起き上がって、明るく言い放ちました。
「だーいじょうぶよ!みらいがどうなるかなんて、だれにもわかんないんだから!」
未来には、たいへんなことだけじゃなくて、たのしいことやおもしろいこともたーく
さんあるんだから!
「そっか。ふたつとか みっつしか ないわけじゃ ないもんね」と頷く女の子に、おば
あちゃんは答えます。
「そうよ! それしか ないわけ ないじゃない!」
彼女は楽しくなって、いろんな未来を考えます。毎日ウインナーの未来や、ロボット
が抱っこしてどこへでも連れて行ってくれる未来・・・。
このたくさんの未来を想像する場面は、ヨシタケワールド全開の斬新な発想の世界で
す。
主人公が、“おとなになったら『未来を考えるお仕事につきたい』”と言うと、おば
あちゃんは、ステキねと言った後、その頃には、もう自分は天国に行っちゃってるか
な、と答えるのです。
するとこの時、女の子はおばあちゃんに何と返答するでしょうか・・。
著者のヨシタケさんがこの絵本のように楽しい発想転換ができるようになったのは、
大学生の頃からだそうです。
「PHPのびのび子育て2015年3月号 わたしの子ども時代」によれば、子ども時代
は、2歳年上の強くて優秀なお姉さんにコンプレックスを抱き、自分は何をやっても
ダメなんだと思い込んで、楽しい発想には至らなかったとか。
ただ工作好きをお母さんが応援してくれ、空き箱などを保存しておいてくれたり、何
か作るとすごく褒めてくれたのがうれしかった。「その子なり」のあるがままを認め
てくれるお母さんが、大好きだったそうです。
おとなは、子どもに将来の目標や夢を持たせたいと願うけれど、子どもたちには、将
来の目標や夢を、今、持っていてもいなくても大丈夫なんだという安心メッセージ
を、やんわりと伝えてあげたいということです。
ヨシタケさんご自身、絵本の創作を始めたのは、子育てでお子さんの発想に触れてか
らだそうです。
焦らなくても、叶えたい夢は必要な時に与えられるのかもしれませんね。
本書の発想転換は日常生活でも大いに活用できるでしょう。
私自身も不安な時は不安を味わいつつ、「それしか ないわけ ないでしょう!」と
発想を拡げてリラックスするようにしたいと思います。