主人公は黒色くれよんのくろくん。
新しいクレヨンの箱から、黄色やピンク、赤に緑のクレヨンたちが飛び出して、白い紙
いっぱいに色とりどりの美しい花や木を描きました。
しかし、くろくんだけは、別。
黒で絵を描かれたら、自分たちの色が台なしになるからと、みんなに仲間はずれにさ
れたのです。
くろくんはクレヨンなのに、自分だけ絵が描けないなんて、悲しくなりましたが、そ
れを助けたのは、シャープペンシルのお兄さん。
彼をなぐさめ、何と画面を全部黒でぬりつぶすよう、こっそりくろくんに勧めたので
す。そんなことして、大丈夫なのでしょうか。
最後はシャープペンシルの出番です。
さて、真っ黒になった画面から新たに生まれた美しいものとは、何だったのでしょう?
それは、私たちを魅了する、夏の夜空の美しいものでした。
主人公は、夜の世界に生きるコウモリのルーファスくん。なかなかかわいい顔をして
いるのに、黒一色の自分の姿にうんざりしていました。
ある晩、カラー映画を見て色彩にめざめ、昼間にあこがれて、拾った絵の具でカラフ
ルに変身しました。
すると変な生きものに驚いた人間たちが、何と彼を銃でうち落としたのです。
ところが痛手を負ったルーファスくんが落ちたのは、さいわい蝶のコレクター、ター
タロ先生の庭。
そこで先生から手厚い治療を受け、ふたたび元気を取り戻したのです。
それからというもの、二人は大の仲良しになりましたが、ルーファスくんは自分の体
に合ったほら穴が恋しくなり、帰っていきました。
しかし夜になると彼は・・。
人は自分に無いものに憧れ、自分らしくないものになろうと思い立つことがあります。
しかし、うんざりするような自分らしさを自分で受け容れ肯定できた時、生かされて
いることの幸せを喜べるのではないでしょうか。
私自身も実父と継母から「生きていることを申し訳ないと思え」というメッセージを
乳幼児期から絶えず受けてきたように思います。
生母が早逝し、継母の世話にならなければならなかったのですから、それも仕方のな
いことだったのかもしれません。
ですから自分らしさを肯定などできず、責めてきました。
しかし大人になってから、カウンセリングの学びを通して、人は何ができてもでき
なくても、天から愛され生かされている命そのもの、存在そのものに価値があると
知り、うんざりするような自分でも、かけがえのない自分のそのままを肯定でき
るようになりました。
今回とり上げた絵本の三人の主人公は、最初はうんざりしていた「黒」という自分ら
しさを周りの人との関係でそれぞれに見直し、謳歌できるようになったのですから、
大きな喜びが得られたのではないでしょうか。