主人公は野良の子ネコの「ぼく」。
段ボールの中でママやきょうだいと暮らしていましたが、ある日皆がいなくなり、ひ
とりぼっちに・・・。
がんばってママや食べ物を捜しまわったけれど、なかなか見つかりません。
ところが、木の枝から落ちそうになったところを知らない人たちに助けられ、施設の
檻へ。やがて思いがけず、にぎやかな里親さんの家に引き取られました。
そして家族皆から「スワン」という名で呼ばれるようになったのです。
そこには、スワンをなでてくれるやさしい手がたくさんありました。
野良猫として生まれ、野良猫として生きていかなければならなかったかもしれない主
人公。
ハラハラドキドキのストーリィと彼のやせた小さな姿に、最初は胸が痛みます。
でも、あたたかな里親さんの家ですてきな名前をもらい、家族に愛され幸せになって
いく様子に心が和みます。
作者の表現力豊かな絵が、読者の皆さんの心をぬくもらせてくれるでしょう。
スワンの伸びやかなかわいい姿に、猫好きさんも心癒やされるのではないでしょう
か。スワンの幸せな毎日を、是非絵本でご覧ください。
私事ですが、うちにも「ボス」という名の保護猫がいました。
ボスは野良猫のお母さん(たぶんツブ)から生まれ、一度も家猫になったことはない
ようでした。
他の3匹の地域猫と一緒にうちに来た時は、すでに成猫でした。
4匹共、お向かいで保護されていた地域猫でしたが、そのお宅が引っ越すことにな
り、うちの保護猫になったのです。
ボスは、水呑み場にきれいな水が置いてあっても、雨が降れば雨どいから流れ出る水
を美味しそうに飲み、猫小屋があっても、外の野草の上で雨にぬれていました。
彼は腎不全を患い服薬治療をしていたため、保護主としてはできるだけ良い環境を与
えたいと望んでいたので、ボスの好きなようにさせてあげたい一方、健康を害する野
良猫気質が気になっていました。
内心、「もう、ボスったら面倒みきれない・・」と思ったこともありました。
ところが、大きな台風が来た日、珍しく猫小屋に避難してきたのです。
「よし、よし」とボスにごはんを持っていくと、彼は珍しくグッと顔を近づけて私に
頬ずりをし、ペロペロとなめてきました。
そんな親愛の情を見せてくれたのは初めてだったのでびっくりしましたが、きっとボ
スは私の気持ちをわかってくれているのだと思い、胸が熱くなりました。
そのボスも昨秋、天へ旅立ちました。
ツブが老衰で亡くなってから、約半年後のことです。
今はきっと親子仲良く、天でしあわせに暮らしているでしょう。
4匹の地域猫たちと暮らした日々はハラハラドキドキすることもたくさんありまし
たが、野外で生きるかわいい猫たちの知恵に感服したり、たくさんのぬくもりをもら
えて感謝しかありません。