主人公は青い馬のアオさん。
森の中で暮らしているアオさんは、ある夜、森の向こうの丘の上にぶどう畑がある夢
をみます。
そこで次の日、夢でみたとおりに森の小道を行ってみると、おいしそうなぶどう畑が
本当に広がっていたのです。
途中で会ったネコがついてきて、“ぶどう畑のことはだれにも内緒だよ”と言いまし
た。
ところが、その次の日、キツネに行き先を聞かれたアオさんは「えーと、ないしょで
ね、ぶどう畑へいくとこ・・」と答えてしまいました。ネコは「アオさんのばかー」
と言いますが、時すでに遅く、キツネだけではなくたくさんの動物たちがぞろぞろつ
いて来たのです。
アオさんは、ふくれっつらのネコに「みんなでたべたほうが、ずっとおいしいよ」と
言いました。
ところが、ぶどう畑に着くと鉄条網が張ってあり、こわいオオカミが、自分の畑だか
ら「はいるべからず」と、皆を追いかけてきたのです。
一人だけ逃げなかったアオさん。
オオカミとの対決もどこかユーモラスです。
そして、ぶどうを食べたのはだれだったのでしょうか?
ハラハラドキドキの絵本ですが、どこまでもやさしいアオさんの魅力に多くの読者の
皆さんがほっこりすることでしょう。
アオさんの夢から始まったこの物語。
ぶどう畑を見つけたら、独り占めなどしないで皆に教えてあげようと思っていたに違
いありません。天からの恵みは皆で分かち合いたいという思いでしょう。
ところがそこへ現われたのが、ずる賢いネコ。さらに独り占めをもくろむオオカミ。
その欲張りオオカミとやさしいアオさんとのちょっぴりおもしろい戦い、そして思い
がけない結末になります。
教訓的なストーリィというより、自然体ですべての存在をいつくしむアオさんの思い
やりが、絵本にあふれています。
私事ですが、食べ物にまつわるちょっと悔しい思い出があります。
小学校入学前に、継母や異母妹、幼稚園の友だちと一緒に、知能テストを受けに行っ
たことがありました。
その時私は、自動車のジグゾーパズルの問題に手間取り、テストを終えて待合室へ
戻ったら、一緒に行った子たちは皆、そこでくつろいでいました。しかも、おいしそ
うに“あんぽ柿”を食べていたのです。
しかし残念ながら私の分はすでにありませんでした。
でも、何だか気まずくて「ねえ、私の分は?」と聞くことができませんでした。
“あーあ、もっと早くあの問題が解けていれば、みんなとあんぽ柿が食べられたのに
な・・”と、何だかさびしく悔しかったのを覚えています。
そのせいか、今でもあんぽ柿には目がありません(笑)
この絵本ではアオさんが、その場にいない人のことまで考えて、“おいしいものはみ
んなで食べたほうがずっとおいしいよ”と言う思いやりに、大きなぬくもりをもらっ
ています。