主人公はいたずらっぽい目で自己主張する子ネコのサイモン。
ある日、彼はライオン、チーター、ピューマ、クロヒョウ、トラなどの大型ネコ科の
野獣たちに出会います。
そして、ものおじせずに「こんにちは。ぼく、サイモンです。ぼくたち、似てます
ね」と言ったのです。
すると5匹の猛獣たちは、その野放図さに目を丸くして驚き、ゲラゲラ笑いだしまし
た。ライオンは“わたしは百獣の王なのだ。たてがみとしっぽのふさがあるのは、わ
たしだけだろう。わたしが吠えれば世界がふるえる“と言いました。
チーターも“俺は世界で一番速く走れるんだぜ”
トラも“俺さまのように大きく強く美しいけものは他にいない”と自慢し、皆が“お
まえみたいなちびの子ねこに俺たちが似ているわけがない。一緒にしてもらっちゃ困
るな”と威張ったのです。
そこでサイモンはしょんぼりと“ほんとに全然違う。へんだなあ。何となくみんな似
ていると思ったのに・・”とつぶやきました。
すると意外にも猛獣たちは互いをじっくり見比べて、似ているところを次々に挙げて
いったのです。
そこでサイモンはうれしくなり“それ、全部、ぼくも持ってます。ちっちゃいけど”
と恐れずに答えました。
こうして5匹の野獣はサイモンと自分たちが同族であることを認めたのです。
さて、サイモンと猛獣たちはどんなところが似ているでしょうか。
子どもたちと一緒に考えると、いろんな意見が出て楽しく盛り上がります。
それから後は、この絵本をさらに楽しんでください。
多くの絵本では、主人公が他の人とは違う自分らしさを探す中、本書は主人公と他者
が似ている、ところを見つけるおもしろさがあります。
サイモンから「似ている」と言われた野獣たちが、いつまでもプライドに囚われてち
びネコとは「違う」と主張したなら、どこまでも平行線だったでしょう。
しかし、体の大きな野獣たちが子ねこサイモンのつぶやきに耳を傾け、柔軟に「共通
点」を見いだしたので「似ている」ことがわかったのです。
そのように、感情ではなく、思考へと方向転換するのが科学のなせる技でしょう。
似ていることを論証するには、互いの共通点を探せば良いでしょうし、違うことを論
証するには相違点を探せば良いことをこの絵本は気づかせてくれます。
本書では、パワーの大きな野獣側が柔軟に対応する爽やかさ、子ねこと猛獣が仲間で
あるという力強い論証が子どもたちに勇気を与えるでしょう。
本作品は、楽しみながら柔軟な発想転換の学習ができ、もしかするとパワハラやいじ
めを回避するような視点を学べる絵本といえるのではないでしょうか。