あるクリスマス・イブのこと。
お母さんが病気なので、その家ではクリスマスの用意が何もできていませんでした。
すると、そこで暮らすねこやねずみたちが、この家の子どもたちのことを心配して、急
いで準備を始めたのです。
ねこのおかみさんは“今夜はおまえたちを食べたりしないよ”とねずみに言い、ねずみ
も”今夜はみんなが仲良くする夜“と言って、テキパキとねこの手伝いをしました。
子どもたちの靴下をとりにいったり、ケーキを焼いたり、もみの木を飾ったり、みんな
クルクルとよく働きます。蜘蛛のおばあさんも手伝って、部屋は美しく飾りつけられ
ました。
そこへ登場したのが、サンタクロースのおじいさん!
サンタクロースは“こんなにきれいに飾って、私を迎えてくれた台所を見るのは初め
てじゃ”と言って、そこにいる一人ひとりにすてきなクリスマスプレゼントをくれた
のです。
トナカイたちに“さあ、クリスマスだ。どんなに小さなつつましい者たちのことも、
忘れてはならないぞ。・・・クリスマスの良いしらせを伝えにいこう!・・”と呼び
かけるサンタクロースの大きな愛があたたかです。
さあ、次の朝、プレゼントを見つけたこの家の子どもたちは、どうしたでしょうか?
私事ですが、幼稚園児だった12月に、継母が病気になったことがありました。
普段、元気な継母が寝込むことはなかったので、この絵本のように家中が沈んだ雰囲
気になりました。
祖母が同居していたため、日常の生活には困りませんでしたが、クリスマス間近に
なっても継母の病気が治らなかったので、毎年飾ってきたクリスマスツリーもなく、
今年はサンタクロースが来てくれないのではないかと、内心、心配でした。
そして、クリスマスの2日前、父が「まだママの病気が治らないから、今年のクリス
マスは、無し!」と言い切った時には、がっかりしました。
でも、祖母が「それじゃ、おばあちゃんがクリスマスのお祝いのごちそうを作ってあ
げようね。」と和らげてくれたので、おばあちゃん子だった私は、とてもうれしくな
りました。
普段、祖母は皿洗いや庭掃除、ゴミ処理など目立たない仕事をしていたので、クリス
マスにどんなお祝いのごちそうを作ってくれるのか、とても楽しみでした。
さて、おばあちゃんのクリスマスサプライズプレートは、チキンライスに笑顔の雪だ
るまとリンゴの入ったポテトサラダ、りんごのウサギも添えられていました。
何といっても祖母オリジナルの雪だるまが2コずつ並んでいるプレートは食べきれな
いほどのごちそうでした。うずらのゆで卵を重ねた小さい雪だるまと、ふつうのゆで
卵を重ねた大きな雪だるま。2つとも、ニコニコしている海苔の目と紅ショウガの口
が笑っている愉快な顔だったので、妹も私も「おばあちゃんの雪だるまが、一番かわ
いい!」とゲラゲラ笑ってしまいました。
そのうえ、サンタクロースもちゃんと来てくれたのです。
クリスマスの朝、枕元にリボンのかかったスケッチブックと新しいクレヨンとお菓子
を見つけた時には、サンタクロースが私たちのことを忘れないで来てくれたことがう
れしくて、サンタさんにもおばあちゃんにもありがとうの思いでいっぱいでした。
そんなクリスマスの思い出があるので、この絵本のようなクリスマス・サプライズ
は、特別にうれしく感じられます。
いつもはひっそりとこの家で暮らしている小さな動物たちが、子どもたちを思いやっ
て準備する特別のクリスマス!
目立たない小さな存在にスポットライトが当たる喜びあふれるクリスマスです。
本書は絵を通して物語の流れがわかりますし、小さな登場人物の思いも絵で丁寧に表
現されているので、読者の子どもたちが想像力豊かに楽しめる絵本でしょう。