主人公は、表紙の絵のような、おかっぱ頭に赤いほっぺのとてもかわいいふたり組、
チリとチリリです。
ふたりはくもり空のある日、行きたいところがあって、いつものように自転車で出か
けました。
ところが、まもなく雨がふってきたのです。
その時見つけたのは、雨の日だけ開くすてきなお店「カフェあまやどり」。
ふたりは早速飲みものを注文し、窓から雨を見ながら楽しみました。
それから売店で、それぞれにぴったりのかわいいレインコートを買い、さらに自転車
を走らせたのです。
その後「さかさあめ」の中を、切手専門店へ行ったり、おいしくて不思議なピカピカ
しずくのグミガムキャンディも食べました。
そして、雨あがり、美しい虹の下をポストまで葉書を出しに行ったのです。
だれに宛てた郵便でしょうか。
答えは、本書の扉に・・・。
前作『チリとチリリ ちかのおはなし』のストーリィにもヒントがあるので、是非そち
らもご覧ください。
現代は電子メールですばやく連絡を取り合う機会が多いですが、この絵本のように、
思いを込めて手紙を書き、気に入った切手を選んで、ポストに投函しに行く遊び心や
ゆとりをみると、どこかほっとします。
本作は前作の続きのようですが、もちろん独立した一冊として楽しめます。
本書の初版本には、「チリとチリリ」シリーズを楽しむヒントや「チリとチリリ おま
けのおはなし」が付録として載っています。
この絵本は、主人公たちがドキドキしながら伸び伸びと夢を実現させていくところに
も大きな魅力があるようです。
3~4歳の子どもたちは養育者から自立するにつれて、冒険への希求も高まります
が、本書では、仲良しの友だちと行く自転車での冒険がファンタジー世界を生みだ
し、想像力を伸びやかに育んでくれるのではないでしょうか。
ゆううつになりがちな雨の日を楽しむアイディアにも、感動します。
たとえば、雨の日に開くお店「カフェあまやどり」。
作者のどいさんが、喫茶店に小物の置いてあるお店が好きというだけあって、雨を見
ながらの食べ物や飲み物もグッズもおしゃれです。
サービスの“あまつぶあられ”の美しいこと!
絵本の最後に登場するグミガムキャンディにも、楽しさがあふれています。
また“さかさ雨”という発想がおもしろく、絵本だからこそ実現できるファンタス
ティックな世界でしょう。
この絵本は見返しのページに森が広がっているので、森林浴をするようにおとなの皆
さんも心癒やされると思います。
動物との触れ合いが多いのも本シリーズの特長でしょう。
作者が里山の自然に恵まれたアトリエで絵本の創作をしているので、身近な日本の野
生動物をたくさん登場させたいという願いがあるようです。
どいさんによって生み出されるチリとチリリの世界では、すべての季節も天気も、命
あるあらゆる存在もモノも、輝きに満ちています。
それを支えているのは、画力だけではなく、作者の豊かな世界観と愛情なのではない
でしょうか。