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絵本「まないたにりょうりをあげないこと」のあらすじや随想

 この絵本について―まな板とコックのドキドキする
                 傑作ユーモラス絵本

作・絵:シゲタサヤカ

出版社:講談社

出版社の対象とする読者年齢:読みきかせなら3歳~
              ひとり読みなら6歳~

出版年月日:2009年8月26日

定価:1,540円(本体1,400円)

 
 はじめに


   本書は、超現実的な発想がおもしろく、ユーモラスな想像の世界で思いきり笑える絵

   本でしょう。

   作者が絵本を作る時に一番大切にしたいのは、子どももおとなも笑えるおもしろさだ

   そうです。

   本書は作者のデビュー作で、第30回講談社絵本新人賞佳作受賞。

   作者の他の絵本には、『りょうりをしてはいけないなべ』『コックのぼうしはしって

   いる』(以上、講談社)などのコックシリーズや、『キャベツがたべたいのです』

   (教育画劇)『オニじゃないよおにぎりだよ』(えほんの杜)などもあります。

   
   
 あらすじと随想


   舞台は、町一番の人気レストランです。登場人物はその厨房で腕をふるうコックさん

   たち、そして料理をする時に必ず使うまな板。

   ある日、一人のコックが“ヒャア~”と声を上げました。

   なんと、まな板が、エビを食べる瞬間を見てしまったからです。

   コックはそのことを仲間に話そうとしましたが、誰もが皆、忙しいので、誰も耳を貸

   しません。

   しかし、店じまいした後、まな板の上に試しにエビを置いてみると、驚くことにやは

   り食べたのです。そのうえ、まな板は“あーあ、見つかっちゃった。ぼく、たま~に

   おなかの上の食べ物を食べてるの”と白状しました。

   さらに、食材ではなく、レストランのできたての料理を食べてみたい。“ねえねえ、

   おねが~い”と甘えてきました。

   そこでコックは、次の日から皆の目を盗んでは、まな板に料理を少しずつ食べさせま

   した。

   ところが3か月ほど経つと、まな板があまりに巨大化したので、店一番の料理長に気

   づかれてしまったのです。

   “おい、その妙にでかいまな板はなんだ?”と。

   そこで、仕方なく件のコックが白状すると、料理長は、店のだいじな料理をまな板な

   んぞに与えるとは!と、かんかん。“今すぐ、まな板を持って店を出ていけ。”と激

   怒しました

   “ごめんなさい!ごめんなさい!”とコックが謝ったその時、何と他のコックたちも

   “自分もまな板にねだられて、内緒で料理をあげていた。ごめんなさい!”と、皆が

   白状したのです。

   万事休す!

   この後、ストーリィはどんな結末を迎えるでしょうか。是非、絵本で楽しんでくだ

   さい。


   
   
 随想とまとめ


   奇想天外でユーモラスなストーリィのこの作品は、年齢を超えて多くの読者の皆さん

   を笑いで満たしてくれるでしょう。

   
   「ミーテカフェインタビュー」VOL.112のシゲタサヤカさんのインタビュー記事によ

   ると、シゲタさんは、食べるのも好きだけれど、調理器具などを含め、食べものや料

   理に関するビジュアル全般に興味を惹かれるそうです。

   この絵本でまな板がどんどん大きくなっていくイメージは、以前、魚屋さんに立てか

   けて干されていた、1mもの長くて大きいまな板がアイデアの原点になったのかもし

   れないということでした。

   
   それにしても、まな板がコックに甘え、できたての美味しい料理を食べてみたいと要

   求したり、どのコックもそれに応えて毎日少しづつ食べさせていたというのは、何と

   ユニークなストーリィでしょうか。

   食いしんぼうで甘え上手でちょっと厚かましいまな板が、最高におもしろく、良い味

   を出しています。料理長が怒っても平然と発言するまな板の予想外な言葉!

   ストーリィだけではなく、どの場面も忙しく立ち働くコックさんたちの表情が豊かで

   すし、厨房に貼ってある貼り紙も愉快です。

   絵の隅々まで見て、シゲタさんの笑いのツボを一つ残さず味わいたくなる傑作ユーモ

   ア絵本です。

   絵のアウトラインが太くて鮮明なので、距離があってもよく見えますし、3歳頃か

   ら、そして小学生の小集団への読み語りも喜ばれるでしょう。

   
   

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