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絵本「ぐりとぐらのかいすいよく」のあらすじや随想

 この絵本について―ワクワクするうみぼうずとの出会い

作:なかがわりえこ

絵:やまわきゆりこ

出版社:福音館書店

出版年月:1977年4月

出版社の対象とする読者年齢:読んであげるなら:5・6歳~

定価:990円(本体 900円)

 
 はじめに


   本書は多くの子どもたちを楽しませてきたロングセラー『ぐりとぐら』シリーズ三作

   目です。夏に読むのにふさわしい一冊でしょう。

   
   
 あらすじと随想


   海水浴に行った野ねずみのぐりとぐらが浜辺で遊んでいると、沖の方から何かが流れ

   着きました。トウモロコシの皮が巻いてある葡萄酒の空き瓶フィアスコ・ボトルで

   す。中に入っていたのは手紙と地図と浮き袋がふたつ。

   手紙には「しんせつなともだちへ しんじゅ・とうだいへきてください。うみぼうず

   より」と書かれていました。

   ふたりは地図を見た後、浮き袋を使って泳ぎながら「しんじゅ・とうだい」へ向かい

   ました。

   すると海の中から「ほーい、しんせつなともだちー」と呼びかけてきたのは、草色の

   しましま水着を着た「うみぼうず」だったのです。といってもさわやかな人間の男子。

   彼は、しんじゅ・とうだいの番人でしたが、灯台の大切な真珠のランプを岩の間の穴

   に落としてしまい、ぐりとぐらに助けを求めてきたのでした。

   そこで、ふたりが背の高さ位の穴に入り込み、大粒の真珠を取って来てあげると、う

   みぼうずは“ありがとう。さすがしんせつなともだち!”と言って、”おいらにでき

   るお返しはないかな?”と聞きました。

   そして泳げないふたりにお礼としていろんな泳ぎ方を教えてくれたのです。

   いぬかき、くらげ・およぎ、くじら・およぎ、バタフライにイルカ・ジャンプ!

   他にもいっぱい。

   ぐりとぐらはうれしくなって大喜びで泳ぎました。それからうみぼうずに、特別速い

   豪快なうみぼうず・およぎで浜辺まで送ってもらいました。

   その夜、ぐりとぐらが見たのはどんな景色だったでしょうか。

   是非、絵本でお楽しみください。


   
   
 随想とまとめ


   この絵本には、楽しさと意外性とが詰まっています。

   まず、「うみぼうず」との出会い。

   偶然ではなく、うみぼうずの方から空き瓶に入れた手紙と地図と浮き袋が届き、招か

   れて出会うのですから、読者の皆さんの期待感もふくらむでしょう。地図は進路を示

   す道しるべなので、ぐりとぐらだけでなく子どもたちも興味津々。

   しかし初めて会ったうみぼうずは意外なことにさわやかさで親しみやすい風貌の男子

   でした。

   実は、作者・中川李枝子さんのスイミングの先生がモデルだそうです。


   

   さらに意外だったのは、大きなうみぼうずが小さなぐりとぐらへ助けを求めるストー

   リィだったことです。

   この物語のように、強者から弱者への救援要請は珍しい気がしますが、助けを必要と

   する時は誰でも、「しんせつなともだち」に助けを求めて良いのだというメッセージ

   が読みとれるかもしれません。

   と同時に、体の大小や強弱にかかわらず、人が人として(あるいはすべての登場人

   物)お互いに助け合い、尊重し合う精神が、このシリーズを初め中川さん山脇さんコ

   ンビの作品には込められているのではないでしょうか。

   読者の子どもたちは、どんなに体が小さくても、大きな人を助けられることがわかっ

   て、励ましを受けるでしょう。

   そして、うみぼうずからもお返しに水泳を教えてもらうのですから、お互いが自分の

   良さを発揮して「しんせつなともだち」になれるよ、というメッセージが伝わります。


   

   この絵本を読んだ後には、うみぼうずに教わったいろんな泳ぎのパフォーマンスをし

   たり、子どもたちが自分で考えた泳ぎ方を披露したりして、読み語りの場がにぎやか

   に盛り上がるでしょう。

   今年海水浴に行けなくても、ぐりとぐらの海はどこまでも青く、子どもたちを遊ばせ

   てくれます。


   

   おとなの皆さんも『ぐりとぐら』ファンが大勢おられると思います。

   仲の良い双子のぐりとぐらの世界。背景の余白が多い絵には想像力が広がりやすく、

   絵を見るだけでホッとする安心感やあたたかさが他の何にも代えがたい魅力なのでは

   ないでしょうか。


   
   

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