小豆を洗うには、かつては竹の 笊 でおこなったそうです。
『怪異の民俗学2 妖怪』(小松和彦責任編集 河出書房新社刊)によると、「小豆洗
い」「小豆とぎ」の怪談は各地に在り、妖怪の正体も小豆婆さまだったり、狐や狸、
貉などの動物、お寺に出る化けもの、夜に川で小豆を洗う音の化けもの、その他さま
ざまなタイプがあるようです。
では、なぜ米や大豆、粟、稗などではなく、小豆をとぐ音が怪異譚として伝播伝承さ
れたかというと、おそらくは小豆が、まじないに使われたからではないかという見解
があります。
また、あずきの洗い方を咎められた嫁いびりにまつわる小豆とぎ譚、泣きやまない子
どもや、夕方外に遊びにいこうとする子どもをおどす小豆とぎ話もあるそうです。
ところで私にとって、小豆は美味しいおはぎやお赤飯の食材だったので、子どもの頃
から、台所で祖母が小豆を洗う音を聞くのが好きでした。
しかし、怖い体験をしたのが、川遊び。
毎夏、父に連れられて行った多摩川で夢中になって小さな魚を追っていた時、深みに
すべりこみ溺れかけたことがあったのです。
本書のおじいちゃんが語るように、川は流れているし深いところもあるので、深みに
足をとられるとあっという間にひきずり込まれてしまいますが、自分が溺れるとは予
想もしなかったことでした。
近くにいた叔父が気づいてくれたので助けてもらえましたが、あの時の怖さは忘れら
れません。
自然の中で遊ぶ時に、子どもたちは好奇心のブレーキが利かなくなるほど夢中になる
ことがあるのでしょう。だからこそ、自然に対する意識を変えるのは必要かもしれま
せん。自然を侮るのは不遜ですし危険でもあるでしょう。大自然に対して畏怖の念を
持つ意味でも、「あずきとぎ」のような絵本は、怖くておもしろいからこそためにな
るのかもしれません。